月9ドラマはタイムスリップ過去改変ものラブコメで、仕掛けと長澤まさみだけがよい。

いやじっさい、長澤まさみがいいなんて生まれてこの方ついさっきまでさっぱりちっとも思っていなかったのだけれど、やー、まーなんというか、よかった。絵に描いたような野球部女子マネで絵に描いたような主人公の幼なじみで、お互い素直じゃなくて、みたいな絵に描いたようなことをするとぴたっとはまるなあ。
で、お話はタイムスリップ過去改変もので、主人公の山下くんが、長澤まさみの結婚式のスライドショーの写真の時間にタイムスリップして、過去を変える、みたいなはなし。山下くんが、内面の悔恨を独白していてそれが高校時代の画面にかぶさっていて、高校時代の野球の試合の場面が、過去時制の劇中劇みたいになっているのだけれど、その中で一瞬、時制が揺れるっていうか、高校時代を「現在」として生きる山下くん、ていうか具体的には、高校時代の場面の中でさらにちょっとした近過去の回想シーンが出てきたあたりで、ぐっと来た。
えーと、たとえば『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(だっけ『ペギー・スーの結婚』だったっけ?)なんか、過去改変もので「もしあのときああしていれば・・・」みたいなテーマがでてくるし、過去を変えると現在も変わったりするのだけれど、今日のこのドラマでは、過去を変えようとしてもけっきょく(ほとんど)何も変わらないしけっきょく(ほとんど)同じ現在(破滅的な!)にたどり着く、という仕掛けになっていて、そのへんの陰惨な仕掛けは悪くない。悔恨の独白のヴォイスオーヴァー、というのがフィルム・ノワールの形式である、というのは先だってもここで触れたとおりの加藤理論で、このドラマはラブコメでありつつノワール、という微妙なさじ加減になっている。先日書きかけていた、マキノのチャンバラでメタフィクション論、というのもそのへんのさじ加減である。
ただし、今日が第一回で、あとたぶん同じパターンで何回か繰り返したりしつつ、最終的には過去を変えてしまって現在も変更されて山下が長澤とくっついちゃってハッピーエンド、みたくなったらちょっと味わいが薄れるなあ。でもフジテレビだし月9だし、ラブコメだし、そういうイージーな落ちが基本だろうなあ。