大学の入学難易度と学納金の相関についてかんがえる。「国立大授業料に格差を提言 財政審の建議案」

http://www.asahi.com/politics/update/0601/TKY200706010386.html

国立大授業料に格差を提言 財政審の建議案
2007年06月02日08時00分
 財務相の諮問機関「財政制度等審議会」(西室泰三会長)が6日に尾身財務相に提出する意見書(建議)の原案全文が1日、明らかになった。ほぼ一律の国立大の授業料を大学や学部ごとに見直すよう求めたほか、小中学校の統合推進による教育コストの縮減を提言。医療・地方歳出の抑制を求めているのも特徴だ。
 意見書は「08年度予算編成の基本的考え方について」と題しており、来年度予算への反映を求めるものだ。
 1日に委員に示された原案では、足元の財政状態について、税収増などで財政健全化に一定の進展がみられるものの、約83兆円の07年度一般会計予算のうち、新規国債発行額はなおも25兆円を超えることを指摘。「大きな負担を将来世代に先送りする異常な状態が続いている」とした。
 また、より積極的に財政健全化に取り組む欧州諸国の事例について「多くの示唆を含む」と記し、日本でも厳しい財政再建目標を新たに設定する必要性を示唆した。
 個別の歳出項目の見直しも求めている。
 教育予算については、現在は国立大の学生1人当たり年間180万円の国費が投入されている一方で、国立大の年間授業料は基本的に53万5800円で横並びになっているとし、見直しを訴えている。背景には、医学部など理系が高めの私立大を参考に授業料に差を設けるべきだとの考えがある。ただ、委員の間には「家計の負担が増える」といった異論が残っている。
 また国立大の運営費交付金についても、大学の実績などに応じて配分する競争的な仕組みへ大胆に見直す必要性を指摘。小中学校をめぐっては、児童生徒数が減っているのに学校統合が進んでおらず、1人当たりの公費や教職員数が多すぎるとして、「統合の推進」を盛り込んだ。
 医療費については、価格の安い後発医薬品ジェネリック医薬品)の利用が米国などの3分の1にとどまっていることを強調。先発品を後発品に振り替えることで1.3兆円程度の節約の余地があるとしている。
 また地方公務員の人件費抑制も訴えている。運転手などの技能労務職が民間の給与水準を大幅に上回っているため「地域の民間給与水準を適切に反映する必要がある」とした。

別の記事。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2007052602019274.html
国立大学費に格差 財務省検討 学部間も経営判断
2007年5月26日 夕刊
 全国の国立大学で一律になっている授業料や入学金について、財務省は二十六日、大学や学部の独自の教育内容や経費に応じて、格差をつけられるようにする方向で検討に入った。現行制度では「標準額」から最大20%増を上限に各大学が設定する仕組みだが、横並び意識が強く大半は標準額と同額に設定している。設備にコストがかかる医歯系や理系の学部は、これまでより高くする一方、文系を安くするなど学費設定に経営判断と競争原理が働くようにし、従来の体系を抜本的に見直す。
 政府が取り組む大学・大学院改革の一環で、授業料の値上げによる学生の負担増を緩和するため、奨学金制度の拡充を併せて検討する。
 財政制度等審議会財務相の諮問機関)が六月上旬にまとめる建議に、授業料見直しの提案が盛り込まれる。国立大学法人の現行の中期計画が終わる二〇〇九年度に向け、具体的に議論される見込みだ。
 ただ授業料に格差をつけることには、教育界から「高等教育の機会均等」を損なうなどとして、反発が出そう。
 経営基盤が弱い地方の国立大学は、受験生確保のための授業料引き下げか、財務体質強化のための値上げかという難しい判断を迫られることも予想される。文部科学省や大学側との調整は難航必至だ。
 国立大の授業料や入学金は、設定の目安となる「標準額」を文部科学省財務省が折衝して決める。財務省は大学が持つ「教育」と「研究」の機能を区別し、授業料は教育機能を賄う財源として位置付けを明確にする。各大学に教育費用に見合った授業料の設定を求めることで、コスト意識を高める狙いがある。
 現行の授業料は、全国八十七の国立大学のうち標準額(年額五十三万五千八百円)より低くしているのは北海道教育大、北見工業大、千葉大、東大、三重大の各大学院と、佐賀大(学部と大学院)だけ。東北大と東京農工大は一部の大学院研究科に限って高くしている。


おもいだしたのは、以前、学生が2回生ゼミのときに見つけてきて報告してくれた論文。

浦田広朗「私立大学学納金の規定要因分析」『教育社会学研究』no.63、1998年
http://ci.nii.ac.jp/cinii/servlet/Kensaku?DOCID=110001877953

日本の、首都圏の、私立大学に限っていえば、入学難易度(とか、スタッフとか図書館とか施設の充実度)と学納金(まぁ、授業料ですね)は、マイナスの相関があって、これは、アメリカの大学にも、日本の中学・高校にも見ることのできない傾向だと。
ふつうは、スタッフや施設が充実してる学校のほうが入学難易度が高くなりそうだし、学費も高くなりそうなのにね。
みたいな論文だと思う。
まぁ、なんとなくそういわれればそうかな、というところはあるけど・・・
ちなみに、
その少し前の科研費の報告で、

丸山 文裕 椙山女学園大学 [1991-1993]「私立大学の授業料規定要因に関する日米比較研究」
http://seika.nii.ac.jp/search_pjno.html?PJNO=03610141

のほうでは、

平成5年度は、本研究の最終年度にあたり、大学の授業料及び大学制度に関して日米比較研究をおこなった。前年度の分析で、日本とアメリカの私大システムにおいて入試難易度が高いと、授業料も高いという事実を確認できた。入試難易度の高い大学は、より威信も高く、質も高い(少なくとも優秀な学友を得る点において)と仮定すると、日本とアメリカの私大システムにおいて、授業料は通常の経済市場と同様の価格体系になっている。
市場主義のなかでどのように育英と機会均等を達成していくかは、高等教育政策の中で重要な課題であるが、その課題達成の方法は日本とアメリカで大きく異なる。アメリカにおいて、育英は、奨学金によってなされているといってよい。質の高い大学教育を多様な階層に開放することによって、優秀な人材を養成しようとする政策である。もう一つの政策課題である機会均等は、これも強力な奨学金と授業料の安価なサ-ビス志向の強い州立大学の拡大、との組合せによって行われているとみてよい。つまりアメリカにおいては、奨学金という学生に対する個人援助によって育英と機会均等を達成しようとしている。
日本において育英と機会均等の達成には、国立大学の果たした役割が大きい。つまり育英においては、「国家ノ須要」の充足という形で、伝統的に、官立、国立大学でなされてきた。また機会均等については、安価で地域近辺に存在する地方国立大学がその役割を担った。しかし国立大学の収容力は小さく、その役割は限定されたものでしかない。日本においては、育英はともかくとして機会均等の政策課題に問題が残る。

となっている。
この研究に関しては浦田論文でも先行研究としてあがっていると思うのだけれど、
むむ?事実関係についていってることがぎゃくなような??
分析するデータの種類がちがうのかな?(授業料と初年度納付金のちがい、とか、全国の私大と首都圏の私大のちがい、とか?)
いずれにせよ、このへんは面白いところである。