「科学的思考」のレッスン 学校では教えてくれないサイエンス (NHK出版新書)
- 作者: 戸田山和久
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2011/11/08
- メディア: 新書
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おっしゃることはごもっともで、まぁそうなのだけれど、でもそんな立派な市民がいた時代などいままでなかったし、これからだって目処も立たないほどじゃないか、と思う。いやぁ、世の中では、「民主主義」が成り立つためにはシティズンシップが必要、「市民」が担い手である、そのためにシティズンシップ教育が必要、等々言うのだけれど、文系・理系、人文社会科学自然科学問わず、「市民」の要件を人々が満たしてたことなんかあったのか、教育なんてひたすら惨敗続きじゃないか、みたいに思う。それは、震災以降の世の中を見ていてもいよいよ明らかなんで、ちょっと途方にくれることはあっても、たとえばこういう本が出てきていまさら新鮮に科学リテラシーの効用など言われてもねえ、という気になる。そんなことは昔からわかってたうえでのあれこれの教育が試行錯誤を繰り返したあげくの現状なんで、ちょっとなぁ、みたいな感想は、正直、ある。あるんだよなあ。
あとまぁしかし、それはそれとして、読んでて思っていたのは、やはり科学論のところ。学内で研究会とかよくやっていただいている言語学の先生と、よく喋っているのだけれど、こちらはエスノメソドロジーとかで、そうすると途中までは話はとても合う、でも最終的なところで決定的に違ってくる。それで、一般的法則を立てようといういみで言語学はいわゆる科学だけれど、そうするとエスノメソドロジーは一回的な個別の事象を記述しようとするわけで、そこんところで分かれてきます、と。で、それはもう、エスノメソドロジーはいわゆる科学に対するオルタナティブだってことでかまわんっちゃかまわんのだけれど、そのへんをうまく、「疑似科学」とは違うものとして説明できないかなあと。この本の中では、ポパーに乗っかりつつ精神分析とマルクス主義を例に挙げて、反証可能性がないからってことで科学の外側にはじき出してしまうような印象を受けるけれど、やっぱりこの本がイメージしている「科学」とは違う動機で動いているけれどやっぱりそれも別の「科学」、みたいなものを、すくいあげる値打ちってのは、あるんじゃないか、とか。