『ありがとう』見た。

ありがとう [DVD]

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万田という人の映画では、なんとも感情移入の取り付く島のない人が主人公で、それはこの一見ヒューマニスティックないわゆる感動作でもおなじだった。神戸の震災にあった中年の男が一念発起してゴルフのプロになりました、という実話をもとにした話。2時間を超える上映時間の前半は震災映画で、後半がゴルフ映画。その時点で無理があるといえなくもないけれど、それでも凡庸な監督であれば前半と後半をもう少しなじませようとするんじゃないかと思うところを、ほとんど何の配慮もなくポンポンと時間を飛ばして、震災の瓦礫の山に立ちつくしていた主人公一家が数分後には仮設住宅で夕食を食べていて、おやおやと思ううちに新築一戸建てで何事もなかったかのように生活していて、唖然としているうちに映画の後半には主人公は東京のゴルフコースでプロになる最終テストをやっている。若いライバルと、薬師丸ひろ子のキャディが唐突に登場して、すっかりゴルフ映画である。そういうわけで、これを見て感動するとか、家族への感謝の気持ちがわくとかいうことは、あんまりなくて、主人公の不可解なほどの確信ぶりだけが映画の前半と後半をつなぐ。その主人公のありようは、万田だなあ、と思いつつ、でも、不可解なほどの確信に突き動かされる主人公の登場するスポーツ映画、としてだけ見れば、黒沢清打鐘』というのがあって、あの感触に近いけれどあそこまでシンプルなB級スポ根映画にもなりきれてないといううらみもあり・・・