- 作者: 渡辺隆裕
- 出版社/メーカー: ナツメ社
- 発売日: 2004/08/01
- メディア: 単行本
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それで気づいたのだけれど、この本で「囚人のジレンマ」の例が出てくるのは前半基礎編の一番最後、しかも囚人そのものが出てくる例はちらっと言及されてるだけで多くは環境問題の例(利得は金額で表される)で説明されてる。これ、なにげに自分的にはすっきりいくわけで、なぜかというと、そもそも囚人の出てくる例というのは、自分だけ自白したら無罪とか相手だけ自白したら懲役25年とか、両方黙秘なら懲役1年、両方自白なら懲役5年とか、その年数を利得の点数にしているのだけれど、なんかいかにも適当に作ったっぽい数字だってのもあるし、また、懲役1年とか懲役5年とか25年とかいうのは実体的な数字というわけでもないかんじがして、つまり25年は5年より20年多いですとか5倍ですとか、そういう加減乗除ができる数字なかんじがしない。もっと質的な違いを表現してるような気がして、そういうものをマトリックスにしても意味ないかんじが直感的に、するわけである。なので、いままで読んだり触れたりしてきたゲーム理論入門の本とか文章とかは、いきなり囚人が出てきて無意味にみえる利得マトリックスを振り回して囚人のジレンマだとか言って、ドヤ顔されたあたりで相当イラッときて、そのあとどんどん応用とか言って、「ゲーム理論は何にでも応用できます」みたいにドヤ顔で、漢軍が「背水の陣」を敷いて趙軍が攻撃するとき漢軍の利得が「100」で趙軍の利得が「−100」ですみたいな、その数字の根拠はなんなんや、そもそも単位はなんなんや、みたいな例をあれこれ出していちいちドヤ顔するような、そういう印象があったのだけれど、この本は囚人がなかなか出てこなかったのがよかったのかも。なんか、後半の発展篇のほうまで、まぁ自分的にはゲーム理論家になるつもりもないのでさらーっと読んだだけにせよ、とりあえず「それはそうなるやろうな」というぐらいの納得感がなんとなく持続したまま読み続けられて、あたかもなんとなくわかったかのような読後感を得たのは精神健康面でよかった。