毎日新聞の連載「教育分権」

http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/edu/news/20051205ddm002040001000c.html
教育分権:学校と自治体が試される/1 思考停止 3回洗う給食ミカン

◇「家ではやらんが国の決まり」
 各地の公立学校給食で、首をかしげる慣習が続いている。皮付きミカンを丸ごと出す際に3回以上水洗いし、ところによっては表面を塩素で殺菌する。「国の通知に従っている」というが、皮をむくミカンを水洗いする必要があるのか
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http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/edu/news/20051206ddm002040050000c.html
教育分権:学校と自治体が試される/2 「経営責任」 村長介入、自ら教壇へ
◇政治との距離課題

 「あそこ。色が変わっている」。成田空港に近い千葉県本埜(もとの)村。今年11月、五十嵐勇村長(55)が窓から指をさした。役場前の道路が黒々と補修されている。「中学生が陳情したんだ」

 道路は県道で、村立本埜中学校の通学路だ。以前は舗装が傷み、雨の日には水たまりができた。生徒たちは車道にはみ出しながら通学した。

 03年6月、生徒会が中島耕一校長(54)の助言で村に改修を要望した。村長は機敏に動いた。「またとない機会だ」。自ら学校へ乗り込み、3年生35人に道路管理の仕組みを教えた。この社会科特別授業を参観した中島校長は「村長は専門的な内容をかみ砕いて話し、生徒は新鮮な驚きを感じた」と振り返る。

 さらに翌日、県道を管理する県出先事務所を生徒とともに訪ねた。県職員は「村長さん、新しい陳情手法ですか」と苦笑した。補修は翌月始まり、10月には役場から学校まで380メートルが美しいアスファルトで覆われた。費用は1000万円強。

 教育には政治的中立が求められる。五十嵐村長は「政治ではなく地方自治の講義だ」と意に介さない。授業内容について学校との事前打ち合わせもなかった。

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村長室の壁に、政治の師と仰ぐ河野洋平衆院議長の近影があり、その下には本埜中で昨年行われた体育祭の写真が飾られている。3年生たちが組体操で「4段タワー」を完成させた瞬間だ。午前中の本番で5回挑んだが失敗。昼休みに再挑戦して成功させた。中島校長が写真を持参した。「村長が午前中に帰られた後、生徒がやってくれましたよ」。学校は落ち着きを取り戻している。

 校長が昨年決めた学校の合言葉は「小粒でもキラリと光る本埜中」。村のキャッチフレーズ「小さくともキラリと光る本埜村」が下敷きだ。

 人口1万人に満たない小さな村で、教育委員会は中学校の荒れに立ちすくんでいた。「村長は村の経営者だ。今でも教委には『現場の情報を伝えろ。でないと経営責任が果たせない』と言っている」。徹底的な介入で学校の荒廃は収まった。しかし、首長自ら教壇に立ち、生徒と一緒に陳情までするのは、法で制約される教育活動を超えると見られかねない。「教育と政治の適切な距離」を決めるのは誰なのか。【教育取材班】=つづく