- 作者: 平井玄
- 出版社/メーカー: 太田出版
- 発売日: 2005/11
- メディア: 単行本
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といいつつおもしろかった。
理屈がどうのこうの、というところを追いかけながら読んでいたわけではなくて(なにしろ通勤電車で読んでいたので)、まぁしかし、そういうことよりかはプロレタリアート気分のもりあげに役立つ本だと思った。
1972年の日付のある巻頭の写真、新宿の街を撮り続けた写真家による、いかにもやばそうな風俗店の店先の写真があって、女たちのダレた雰囲気がいかにもヤバそう、いかにも72年新宿、なのだけれど、もんだいはその店のとなりに写り込んでいるクリーニング屋で、それがこの著者の実家であるらしいのだ。このツカミはけっこうぐっときて、写真に「写されてしまった側」からの言葉は、写真を写した人と見る人との回路にびみょうな亀裂を・・・みたいなね。(そういえばごくさいきん、ちょうど似たような話を聞いたおぼえがある。社会学者の調査資料写真に写り込んだ少年がのちに長じて社会学者になった、みたいな)
で、そういう新宿系山谷系の文章なので、まがりなりにもネクタイをして通勤電車で読んでいるというのは共感の接点がなさそうな気もするのだけれど、けっこう教育社会学者の耳塚先生の仕事が紹介されていたりして、そのへんは、ぐっとくる。
あと、アイラーやパーカーがオチにもってこられているところが、フリージャズ好きの心情左翼マインドに心地よい。