卒論で、死の教育、なんてやるやつがときどきいるし、なにせ
プラトン好きなので、『
パイドン』などを学生に薦めながら、哲学は死の予行演習なんであって、「生きる力の教育」なんぞよりずっと正しいねんぞといきまいたりしていたのだけれど、この本ではいきなり、その『
パイドン』がとりあげられていて、そこで
ソクラテスと
プラトンを切り分けて対決させているんである。というのも、
ソクラテスの死の場面に、
プラトンは居合わせていなかったと『
パイドン』にわざわざ書いてあるんであって、「
プラトンは病気だったと思います」という
パイドン君の台詞がある。そこで、死に向かい死の哲学を滔々と語る
ソクラテスと、病いとともにあることでその決定的な場に居合わせることをしなかった
プラトン、という対比が成立するという次第。おもしろい。
ジャン=リュック・ナンシーが挙げられているけれど、私は
ブランショのナンシー論『明かしえぬ共同体』が好きなのでそのへんもよかった。あと、じつに唐突に
タルコット・パーソンズの『社会体系論』の医療
社会学部分に一章が割かれているのもよかった。