『獄門島』

獄門島 [DVD]

獄門島 [DVD]

きれいな着物を着せた女子を俳句に見立てて連続殺人、というコンセプトは前作から引き継いでいるわけで、それが、三姉妹を順々に殺していく、というふうになっていて、なんていうか、「一丁あがり式」なんである。殺される三人は、いちおう三人の誰かが養子を取ると本家を継ぐことになる、ということではあるけれど、三人の誰がどう、という描き分けは行われていない。三姉妹はまだ子どもで、しかも揃いもそろってアホの子っていうことに(たぶん)なっていて、だから、社会的役割をいま果たしているわけでもないし、また、将来的に本当にこの三人のうちから跡継ぎが出てうまくいくとは誰も思っていないわけで、ということは生きようが死のうが、誰が誰でもどの順番でも、物語の展開上あんまし関係ないっていう設定なわけで、だから、お話の構造上、この三人は、十把一からげに片っ端から殺されるためだけに登場してるんである(だからたとえば、この姉妹が4姉妹でも10姉妹でも、お話の構造は変わらない)。そのへんが、前作よりも「一丁あがり式」だなあ、と感じた理由。
で、まぁそのへんは安易なんだけれど、今回は「座敷牢」が出てきたのが興味深かった。芹沢『狂気と犯罪』に出てくるような(いや、それよりかは上等か?)座敷牢の描写は、時代考証がどの程度しっかりしているかよくわからないけれど、それっぽいかんじの迫力はあった。
狂気と犯罪 (講談社+α新書)

狂気と犯罪 (講談社+α新書)

あと、「生駒の聖天さん」なんていうのが出てきていて、なんか、あれは生駒からクレームはつかないのかな?
それはそれとして、いっさい本筋とかんけいなく、坂口良子再評価の機運が高まらないかしら。沢尻エリカからフランス成分を抜いて、沢尻会的な要素を抜いて気立てをよくして、獄門島で散髪屋の娘にしたような感じだと思っていただければほぼ間違いない。