ブーバー&ロジャーズ『対話』よかった。

ブーバー ロジャーズ 対話―解説つき新版

ブーバー ロジャーズ 対話―解説つき新版

  • 作者: ロブアンダーソン,ケネス・N.シスナ,Rob Anderson,Kenneth N. Cissna,山田邦男,今井伸和,永島聡
  • 出版社/メーカー: 春秋社
  • 発売日: 2007/03
  • メディア: 単行本
  • クリック: 4回
  • この商品を含むブログ (11件) を見る
ロジャースは好きで、また、ブーバーというのも、学生時代に『我と汝』を読んでよかった記憶があったしロジャースが参照するのもわかるなあというかんじで、だからこの対話というのはすんなりいってるんだろうと思って、本屋で見かけたときもスルーしたりもしていたのだけれど、買って読んでみたら、スリリングですこぶる面白かった。
この対話セッションを文字化したテキストにはいくつかの版があるらしい。で、旧来の版というのは、聞き間違いやら、編者の善意によってある種の修正がほどこされてたりとかで、もとの対話そのままではなかったらしい。そこで、もとの録音テープに戻って、相槌とか沈黙の秒数とかまできっちり書きおこして、詳細な註解と、異版との異同なんかを書き込んだのが、この新版ということなんである。
新版を編集したのは、コミュニケーション論の人たちで、エスノメソドロジー的な会話分析に対してはまぁじゃっかんの当てこすりを書くようなタイプの人たちなのだけれど、まぁ対話そのものの流れや息遣いみたいなのに敏感な人たちのようだ。旧い版だと、ブーバーvsロジャース、みたいな図式ありきで、ブーバーの「意見」とロジャースの「意見」がぶつかる、みたいなふうに描かれているらしい。それはつまり、発話を意見に還元しているわけで、そうなれば、相槌とか沈黙とかは無視できることになる。でも実際は、相槌とか沈黙とか、会話ならではの流れや息遣いってものがあって、その次元でみていくと、単純な対決ってことにはなってないし、両者の視点が意外と食い違いながら、お互いに対する敬意や聴衆への気配り、対話セッションそのものをうまく維持していく配慮やら、そこから互いに何かを得る経験をしているとか、そういうことが空気として伝わってくるようになっている。