「指導力不足教員」の免職が可能に……法改正で2008年度から

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指導力不足教員」の免職が可能に……法改正で2008年度から
[教育動向]

斎藤剛史

2007/10/15 10:00:00

子どもに対してまともな授業ができない、子どもとコミュニケーションすることができないなど、教師として当然身に付けているべき指導力が足りない「指導力不足教員」の存在が大きな問題となっていますが、その扱いが2008(平成20)年度から大きく変わることになりました。
6月に成立した改正教育公務員特例法によって、指導力不足教員に対する研修が法制化され、研修を受けても十分な指導力がない教員を免職することができるようになったからです。

公立学校教員のなかのごく一部にいわゆる「問題教員」がいることは、以前から指摘されてきましたが、公務員の身分保障の問題から、懲戒処分相当の事件でも起きない限り、実効的な対応ができませんでした。
しかし、2002(平成14)年に地方教育行政組織法が改正され、指導力に欠ける教員を教職以外の職種に配置転換できるようになりました。現在、すべての都道府県教育委員会が配置転換制度をもっています。
一方、2006(平成18)年度は全国で合計450人が指導力不足教員と判定されています。具体的には、指導力不足と判定された教員に対して研修センターなどで特別研修を実施するところが多く、指導力が身に付いたと認められれば学校に復帰し、そうでなければ他の職種に配置転換になります。

ただ、各都道府県教委がそれぞれ独自に実施しているため、指導力不足の認定基準、特別研修の内容や期間などがまちまちでした。
また、教員以外に配置転換するにも適当な職がないため、十分に機能しない面もありました。このため、指導力不足教員に対して「指導改善研修」を実施することが、法律で明文化されたのです。
指導改善研修の期間は原則1年間で、さらに1年間の延長が可能ですが、それでも改善がみられなければ免職にすることができます。
この制度は2008(平成20)年度からスタートすることになっており、現在、文部科学省が学識者などによる会議を設置して、指導力不足教員の判定のためのガイドラインなどを作成しています。実施されれば、指導力不足教員の問題が大きく改善されることになるでしょう。

ところで、指導力不足教員の認定や指導力改善研修の結果判定には、教育関係者だけでなく、弁護士、医師、保護者などの第三者も加えて公正さを保つことになっていますが、どのような教員が指導力不足といえるのかは、非常に難しい面もあります。
たとえば、あるクラスで学級崩壊を起こした教員が、別のクラスを担任したらきちんと指導できたという例は珍しくありません。
教委や校長の方針に反対する教員が、指導力不足教員と認定されて追い出される可能性があると懸念する声も、教育関係者の一部にあります。
一般の教員を萎縮させないようにするためにも、公正で透明な制度の運用が求められます。