正式採用前に辞める新採教員が増加……文部科学省の調査

http://benesse.jp/blog/20071004/p2.html

正式採用前に辞める新採教員が増加……文部科学省の調査
[教育動向]

斎藤剛史

2007/10/04 15:00:00

文部科学省はこのほど、指導力不足教員の数などを調べた「公立学校教職員の人事行政の状況調査について」の結果をまとめました。新聞やテレビなどでは、2006(平成18)年度に指導力不足と認定された教員が全国で450人に上っていることが大きく取り上げられました。
しかし、同調査には、もう一つ気掛かりな結果があります。それは、採用後1年間の「条件附採用期間」を終えて正式採用になる前に、退職する教員が増加しているということです。

公立学校の教員は新規採用後、担任などをしながら、指導教員の下で1年間の初任者研修を受けます。このため、採用後1年間は条件附採用期間(企業・一般公務員は6カ月間)となり、1年間の勤務成績などによる評価を経て、正規採用となる仕組みになっています。条件附採用期間後に正式採用とならなかった教員の数は、2002(平成14)年度採用が102人、03(同15)年度採用が111人、04(同16)年度採用が191人、05(同17)年度採用が209人、06(同18)年度が295人と、次第に増えています。

2006(平成18)年度採用者のうち正式採用とならなかった295人の内訳を見ると、成績不良による不採用が4人、死亡5人、分限免職1人、懲戒免職が4人で、残る281人は「依願退職」です。しかも、依願退職281人のうち84人が、「病気」を理由に退職しています。
依願退職者とそのうちの病気退職者の推移は、2002(平成14)年度94人(うち病気15人)、03(同15)年度107人(同10人)、04(同16)年度172人(同61人)、05(同17)年度198人(同65人)、06(同18)年度281人(同84人)となっています。病気退職者については、その多くが「精神性疾患」が原因ではないかと指摘する教育関係者もいます。

正式採用を待たずに退職していく新採教員が年々増加の一途をたどっているということは、景気回復による民間への転職増加、資質的に教員に向かない人間が採用されるケースが増えたなどの理由だけでは、十分に説明できません。教育関係者の間には、想像以上の業務の多忙化、子どもや保護者との関係からくるストレス、社会全体の教員バッシングの高まりなどで、新採教員が退職に追い込まれているのではないか、と見る向きもあります。

1年間の条件附採用期間で実際に子どもと接してみて、教職に向かないと自ら判断して辞めることは、本人のためにも子どものためにも、悪いことではありません。また、教員採用者の全体数から見れば、依願退職者の割合はごく少数であるとも言えます。
しかし、希望に燃えた新採教員のなかで、正式採用前に辞めていく者が年々増加しているということは、やはり気になる問題です。

文部科学省の調査は
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/19/09/07091303.htm