『男はつらいよ 夜霧にむせぶ寅次郎』みた。奇妙な。

男はつらいよ 夜霧にむせぶ寅次郎 [DVD]

男はつらいよ 夜霧にむせぶ寅次郎 [DVD]

録りだめした寅さんのDVDを、ダイソーで買ってきたDVDファイルになおして、そのうち見ていないのをチェックしていたら、どれを見てどれを見てないかがもひとつわからなくなっているのだけれど、これは見ていないと断言できたのを、見た。
中原理恵かよ、と思ってずっとスルーしていたのだけれど、見てみたら妙にいいのである。人呼んでフーテンの風子、ということで、しかし、聡明なかんじなのだ。寅さんの売ってるオルゴールを「買った!」と言ってジャストなタイミングでサクラをやるところでぐっときた。ところが、渡瀬恒彦a.k.a.徒然亭草若師匠がトニーという、キグレサーカス(懐かしい!あのぐるぐるまわるやつ見たことあるぞ)のオートバイ乗りで、この男にふらふらいっちゃう。寅さんが、堅気の亭主をみつけろというのに、ふらふらいっちゃうわけで、んで、不幸になったりもして、んで、だけどもういっぺん寅さんに救われたり、またおん出たり、あれやこれやでけっこう、起伏というかコントラストのきついストーリーなのである。そこに、タコ社長の娘の美保純が嫁に行く話とか、旅先で知り合った佐藤B作が逃げた嫁を追うのにつきあうとか、そういうエピソードが挟み込まれて、そのへんも盛りだくさんでしかも熊が出る。北海道だけに。だから、まとまっていないといえばまとまっていないし、しかし、それやこれやなんやかんやあっての寅さんだといえばいえなくもない。
アヴァンタイトルの寸劇が、無国籍風のアクションで、これは「夜霧」ってぐらいなので日活なのかと思ったけれど、敵役で出てくるのが渡哲也ではなくて弟の渡瀬のほうで、渡瀬は東映アクション映画出身だったわけだし、そして、無国籍風のセットの奥の大階段から「階段落ち」をやってのけるので、ああ、『蒲田行進曲』(82年、角川映画で松竹系公開)か、と了解したわけだが、そうなると、東映アクション(渡瀬も出演した)の深作欣二が、角川映画で、松竹「京都」撮影所を舞台にしつつタイトルが「蒲田行進曲」であるような作品を撮ってしまってそれが松竹系で公開されてヒットしてしまったことに対する、屈折した参照なのだと、いえるんじゃないか。