「高収入でなければ国立大に進めない!? 学生生活調査」

http://benesse.jp/blog/20080522/p1.html

[教育動向]
渡辺敦司
2008/05/22 15:00:00
独立行政法人日本学生支援機構はこのほど、2006(平成18)年度の学生生活調査の結果を発表しました。大学生や大学院生の生活費などについて、隔年で調べているものです〔2002(平成14)年度までは文部科学省が実施〕。その中で、国立大学に子どもを通わせる家庭のうち、高収入の層が増える一方で低収入層が大幅に減少するという、気になる実態が明らかになっています。

まず、大学の学部生(昼間部)全体の状況を見てみましょう。平均学生生活費は、学費が117万1,300円〔2004(平成16)年度比2,800円増〕、生活費が72万3,800円(同4万8,500円減)の、計189万5,100円(同4万5,700円減)でした。2000(平成12)年度は学費が112万1,400円、生活費は93万6,800円で、それ以降、学費が徐々に増加する一方、生活費は6年で20万円以上も落ち込んでいます。毎月1〜2万円ほど切り詰めなければ大学生活が立ち行かなくなっている、ということでしょうか。
ただし、これはあくまで国公私立の平均値です。それぞれの学生生活費は、国立150万900円、公立139万6,200円、私立201万7,200円と、国公立と私立では依然として大きな差があります。また、自宅外通学の場合は、国立でも私立でも自宅通学生より70万円以上かさんでいます(公立は60万円弱)。

気になる数値は、子どもを進学させた家庭の年収です。全体の平均でみると2004(平成16)年度比0.5%増の846万円と微増しているのですが、国立が1.4%増の792万円、公立が1.3%減の740万円、私立が0.5%増の865万円となっており、国立大の伸びが目立ちます。
調査ではさらに、世帯の年収を5等分して、各層の状況を調べています。国立では、1,090万6,000円以上の層が前回(1,092万9,000円以上)に比べて0.5ポイント増の14.6%を占めたのに対して、488万1,000円未満の層では前回(504万4,000円未満)に比べて8.7ポイント減の17.1%と、大幅に落ち込んでいます。488万1,000円以上678万9,000円未満の層では19.4%(前回の504万4,000円以上693万4,000円未満の層に比べ4.4ポイント増)、678万9,000円以上849万5,000円未満の層でも29.5%(同693万4,000円以上858万8,000円未満の層に比べ5.1ポイント増)とむしろ増えているのですが、一定以上の収入がなければ国立に進めなくなっている、という実態を現していると見ることもできます。
私立を見ても、1,090万6,000円以上の層が0.6ポイント増の15.7%、488万1,000円未満の層が7.0ポイント減の16.1%と、国立ほどではないにせよ、やはり488万1,000円未満の層の割合が減少しています。

学費が高くなり、奨学金の支給も厳しくなるなかで、大学教育を受けたい人が、家庭の事情で進学機会を奪われたり、選択幅を狭められたりしているとしたら、問題です。社会全体で考えていかなければならないことではないでしょうか。

私立のほうが家庭の所得が高いです。