『難民』読んだ。

難民 (思考のフロンティア)

難民 (思考のフロンティア)

表紙に「難民 exile」って書いてある。そうするともう、エグザイルのことで頭がいっぱいになってしまい、何を読んでもエグザイルの人の顔で思い浮かぶので困った。「はじめに」のさいしょのところで、人口1000人当たりの難民受入数は日本ではまだ桁違いに少ない、とか書いてあると、ひところ流行ったエグザイル増殖ギャグが思い浮かんで先に進まない。なので、この本の後半第II部で、「難民」という日本語とそれに該当する(はずの)いくつかの西欧語との食い違いの記述を読んで、ようやくおちつく。ふつうに英語で翻訳するなら「難民」は「refugee」。でもさまざまなコンテクストと意味の含みを読んでいくと、「refugee」でことたれりとはならない、むしろ日本語の「難民」の語の含みのほうが複雑な事態をよくあらわすともいえる。「難民」とはたとえば「避難する民refugee」であったり「流難の民exile」であったり「耐難の民resistant」であったりする、総じて「受難の民sufferer」としての「難民」なのだ、というぐあい。そういうふうにして、射程の深い議論になってく。