『目白雑録5 小さいもの、大きいこと』読んだ。

目白雑録5 小さいもの、大きいこと

目白雑録5 小さいもの、大きいこと

ようやく。それで、前の巻については(http://d.hatena.ne.jp/k-i-t/20110713#p1)、連載の区切りがついたころに震災があったのだけれどさわがないでいるべきところでさわがないでいていい、という感想をもったので、その次の巻で「震災後」に書かれるのも、さわがない日常の話だろうかと予測していたものだけれど、読んでみたらまったく一冊まるまる震災がらみだった。というか、震災をめぐって語られた言説や思い出されたあれこれについて、テキストが別のテキストを呼びだしながら、延々とあれこれ言うというような一冊で、まぁひとつにはロラン・バルトファシズムについて言った「何かをいわせないのではなくて、語らせるもの」という線でもって、震災にあたって誰に頼まれたわけでもないのに一斉に語られた語り(「私は絶句した」「社会は一斉に自粛ムードに包まれた」「文学は言葉を失った」だのなんだのという言い方じたいが一斉に語られたというのも含め)について、あれこれ言ってるわけだけれど、まぁしかし気が付けばこの本じたいがまるまる一冊震災がらみになってるわけである。勉強になるのはいつもながらのことにせよ、まぁ魅力のないものがいかにうんざりさせるか馬鹿なものがいかにおろかであるかを読むのは、まぁたしかに陰気なユーモアというか、テキストの細部をつつくたびにうんざりやらおろかやらがそのたびにひょこひょこっと顔をだしてふくれあがりまた次の細部を呼び出すというのはクセになるというか、それはそれでやめられない楽しみなのではあるにせよ、まぁ次の巻ではまたもう少し、魅力のあるものがいかに魅力的かとか、そういうふうなものを、まぁ世界は広いわけなので、読みたいとは思ったわけである。