『少し不思議。』読んだ。オチを付けたがるのはやはり漫画家の人だからか。そこに思わぬ弱点、人としての弱点が出てくるがな。

少し不思議。

少し不思議。

いいというのを見かけて、気にかけていて書店で見つけたときに買ってたものを、読んだ。著者は本業は漫画家の人だけれど、文芸誌に連載された小説で、三回の連載のようである。で、まぁ最初のうちはふつうの小説で、まぁ文学とは言わないにせよふつうの小説としてふつうに読んでいたけれど、連載三回目とおぼしきパートで急に調子が変わってオチをつけに走っているので、あれあれと思う。そういうのはやはり漫画家の人だからなのかな、と思わないでもない。でも、それはやはりしょうもないと思うし、ふつうの小説をふつうに最初から最後まで読ませてそれなりに良かったと思わせるほうがだんぜんむつかしいしえらいんだけどなあ、と思いつつ読了。そしてなにより、そのオチの部分に東北の震災と福島第一原発事故のことを持ってきていて、それが、いかにも東京の人間って結局こんなかんじの認識なんだよなあ、と寒々しいかんじで、そういうのはつまり、著者渾身のつもりのオチに、人としてどうなのかという弱点が出てきてしまってるということなんだろうなあと思った。
まぁ、自分が思ったのは、P.K.ディックをやりたかったらこういう小説になった、というかんじで、まぁ『時は乱れて』に似た感触がちょっと感じられなくもないのだけれどそれなら『時は乱れて』を読んだ方がいいわけで、ディックはやはり本物で、『時は乱れて』はやはり最後のところでなぜか瞬間的に痛切なかんじがたしかにあるのである。と思った。