- 作者: 三島邦弘
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2014/09/19
- メディア: 単行本
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一般論として、経営者が状況に応じて方針転換することじたいは必要だろうし立派なけっこうなことだとは思うけれど、この社長さんは前の本でも、会社ウェブサイトのマガジンでも、とにかく理念を語るし、その理念が出版社の運営や本の性格に反映されていてそれが価値にもなっている、そういうかんじなのである。だから、自分たちはこの「なんにもない」城陽という町から発信するのだ、それがいいのだ、という高らかな宣言は、某ほがらかな出版社をぐぐっと魅力的に見せたわけだし、少なくとも同じような「なんにもない」場所でじたばたしている人間にとっては心強かったものでもあったわけで、まぁそういうわけだから、城陽オフィスがあっさり撤退してしまったときには、あれ、と思ったし、そしてこの本で、城陽では感覚が死んでしまう、あそこにいては自分でも気づかないうちにダメになってしまうのだ、だからこそ自分たちは京都の市街地に移るのだ、それこそが答えなのだ、と例によって高らかに繰り返し宣言をしているので、まぁなんていいますかね、少なくとも城陽的な「なんにもない」場でじたばたしている人間の心を折るのに十分な本ではあるわけである。いやまぁおっしゃることはわかる、いやというほどわかるはなしで、地方の城陽的な「なんにもない」場では窒息して感覚が死んでしまってあんなところじゃなんにもできない、そうだろう、みたいなことはいつでもだれでもいうことなわけなのだけれど、しかし、自分の転向を正当化するために城陽を貶めて踏みつけにするというのは、人としての礼儀というか、一宿一飯の恩義ある相手への態度というものとして、やはり許しがたいでしょう?と思うのだった。