以前買って
積読状態の廉価版DVDの
オーソン・ウェルズを見た。ちょっと勢いをつけるために、『シネクラブ時代
アテネ・フランセ文化センター・
トークセッション』の
四方田犬彦の
オーソン・ウェルズ論を読んでから。
四方田のウェルズ論は、
ヒッチコックとウェルズを対比させる視点を出していて、
ヒッチコックが「巻き込まれ型」のサスペンスでもって、いわば被害者的な視点から、無実の主人公が謎の事件に巻き込まれて追い詰められハラハラドキドキしつつ謎をといていき最後に真犯人が明らかになってめでたし、というおはなしをつくって観客をうまく感情移入させるのに対して、ウェルズにも謎がありサスペンスがあるのだけれどウェルズ自身が真犯人で中心にドカンと居て、そしてそのウェルズ自身が権力であり、謎であり、そして追い詰められていき、最後に権力の頂点で破滅する、という、権力の悲劇というようなおはなしなので、まぁ客受けはしないけれど、みたいなことで、それはなるほどと思う。で、この『謎の
ストレンジャー』、やはりウェルズが真犯人で悪であり、そして追い詰められていき、最後に破滅する。時計棟が舞台なのも
ヒッチコック的といえば言える。