通勤電車でとばし読む『 マジ文章書けないんだけど』。おっさんが就活をダシに女子大生に作文を教えて運命の師匠と呼ばれちゃうファンタジー。

例によって例のごとく、ツイッターかなんかで見かけて、読んでみた。帯には「2017年文章術で1番売れた本」と書いてあり、「朝日新聞ベテラン校閲記者が教える世界一わかりやすい文章教室!」とある。というわけで著者の人は、朝日新聞校閲記者をやりながら、漢字コラムみたいのを書いたり、カルチャーセンターで作文教室をしたり、早稲田大学生協の就職講座をやったり、企業の研作文研修やコーチングをやったりしている人らしい。で、この本、マンガ入りのビジネス書ふうに、会話形式で進む。就活を控えてあせる、喫茶店バイト中の、髪をお団子にしている女子大生「すず」と、喫茶店の常連客の、脱サラ起業して20年のベンチャーキャピタルをやってる「謎のおじさん」が登場人物。女子大生がエントリーシートが書けなくて悩んでいるところにおじさんが声をかけて、それで女子大生が、師匠になってくださいとたのみこむ、というのがプロローグ。会話の文章は、女子大生のほうが丸字になっているのでいかにも女子大生ですバカなんですというかんじになってる。ま、それでおじさんが、最初は文法的なこと、主語と述語の対応とか、「は」と「が」の使い分けとか、まぁいろいろ説明して、例題もあって、まぁそのへんは文章術の本という感じでわるくないと思う。ただ、この本は、着地点が「エントリーシート」なので、こっちとしてはだんだん作文の指導に共感しにくくなってくるのはたしかで、なんか学生時代に吹奏楽部でトランペットを吹いてた、というネタをふくらませて、被災地支援のために東北に行って演奏して被災者の方からありがとうのことばをもらいましたみたいな作文にするのがいいのかどうかこっちにはさっぱりひびいてこない。いまどきの就職活動とか自己PRとかには、いろいろと疑問が呈されているということはあるわけで、そこにアジャストして着地点をもっていくことは、文章表現ということを、正確でシンプルな事実を伝えることではなくて、採用担当者に迎合する巧言令色だの感動エピソードアピールだのにしてしまうんじゃないか、という気がしなくもない。そしてそこで気持ちいいのは、就活をダシに必死のアピールを受け止める採用担当者であったり、また、その採用担当者になりかわって「エントリーシートの師匠」として女子大生に尊敬されちゃったりする「謎のおじさん」その人だったりするだろうわけで、そのあたりは、この本のオチのところ - まじで意味が取れないんだけどこれどういうこと? - に関わってもくるのではないかと思う。