一番幸せなのは10代、一番不幸なのは40代。− 『失われた10年』に、育った男の子の意識 −

博報堂生活総合研究所 10代男の子の意識調査
http://www.hakuhodo.co.jp/news/2004/20041221_0.html

博報堂生活総合研究所は、2004年6月に、16歳〜19歳の首都圏に住む男子200人を対象に、彼らの意識を探る調査を実施致しました。この度、その分析詳細がまとまりましたのでご報告致します。
 
 1990年代という『失われた10年』に育った彼ら。少子化時代とは言え、この国の未来を背負っていくのは彼らはその若さと純粋さ故に現代社会を綺麗に映し出す鏡になっているともいえます。彼らを知ることは大変意義深いのではないでしょうか。

●10代男の子は、社交性の有無で友達を判断する。

 「好感が持てる男の子のタイプ」を10代男の子に調査した結果、1位は「人に配慮ができる人」、3位は「社交的な人」、4位は「話し上手」、5位は「誰とでも仲良くできる人」、7位は「聞き上手」。上位にランキングされたのは、社交性を示す項目が多くなりました。
 「好きなタイプの女の子」も聞いた結果、3位は「人に配慮ができる子」、4位は「場の空気が読める子」、4位は「自分に意見を言ってくれる子」、6位は「聞き上手な子」、8位は「話上手な子」と「話がおもしろい子」。こちらも社交性を示す項目が多くなっています。
 今の10代男の子は、社交的か否かで友達を評価するようになってきているようです。


●10代男の子は、『ケータイ世代』。96.5%がケータイを保有。15才からケータイ生活。

質問:携帯電話を持っていますか? 

   はい 96.5%
   いいえ 3.5%

質問:何歳からケータイを持ち始めましたか?

   <平均> 14.99歳(最年少は9歳)

彼らのほぼ全員(96.5%)が、ケータイ電話を持っていました。
また、彼らがケータイを持ち始めた平均年齢は、中学生である14.99歳。20歳を越える前にケータイを持ち始めた最初の世代なので、『ケータイ世代』と名づけても良いかもしれません。 
今回の調査で、最も早くケータイを持ち始めた男の子は9歳。塾通いをする子供を心配して、幼い子供にケータイを買い与える親が多くなっているようです。

質問:1ヵ月のケータイ料金はいくらですか?

   <平均> 6076.48円(最大は34,000円)

 彼らの「1ヵ月のケータイ料金」の平均は、約6000円。彼らがまだ10代であることを考えると、彼らにとってケータイ料金の出費は、相当な痛手となっていることが予想できます。

質問:ケータイに何人の人が登録されていますか?

   <平均> 71.66人
 
 彼らのケータイには、約70名もの人が登録されています。社会人に70名の登録者数があってもおかしくはないかもしれませんが、彼らはまだ10代。かつての10代男の子は、クラスの友達や部活の友達、合わせてせいぜい10〜20人くらいの交友関係しか持っていなかったのではないでしょうか。ちなみに、今回の調査で最も多かった男の子は、350人もの登録人数がありました。ケータイは、彼らの対人関係を大きく広げることに寄与しています。

質問:1日のメール数は、平均すると何通ですか?

   <平均>
   送信13.02通
   受信16.94通

 彼らが1日にやり取りするメール数は、送受信合計すると平均で29.96通でした。最も数が多かった子は、1日に200通ものメールのやり取りをしていました。彼らには、メールを交換しないといけないという義務も生じているようです。

 今の10代男の子が社交性に過剰な重きを置くのは、ケータイが彼らに影響していると考えられます。ケータイは彼らの対人関係を大きく広げてしまったので、彼らはいろいろなタイプの人間と接する機会が増え、接し続けなくてはいけない義務も生まれました。年齢相応以上の社交性を身につけないと、この広い人間関係は乗り越えられない。だから、今の10代の中で社交性を身につけている子は周りから評価されるということのようです。

●10代男の子は、今が一番楽しく、40代が一番不幸だと思っている。

 「何歳の時が、人生で一番不幸だと思うか」という問いに対し、「40代」と回答する子が一番多くなりました。今回の調査対象者である10代男の子の父親の平均年齢は50.08歳、母親は46.74歳。「40代」とはおおよそ、彼らの親の年齢を指しています。彼らは親を見て、「40代が人生で一番不幸」と判断しているのかもしれません。
 また、「何歳の時が、人生で一番幸せだと思うか」と聞いたところ、「10代」と答える男の子が最も多く、半数いました。10代男の子は、自分の40歳時点での将来イメージが暗く、今が一番幸せなようです。

●10代男の子は、親と仲良し。

彼らに「親への反抗期はあったか」を調査してみた結果、「大変ある」と答えた男の子は4人に1人の25.5%しかいませんでした。「少しある」「あまりない」「全くない」と回答した子を合計すると、約7割にも達します。彼らには反抗期が少ししかない、もしくは、反抗期自体がないようです。

また、反抗期がちょっとでもあった子に、「反抗期は何歳から始まり、何歳に落ち着いたか」を聞いてみました。結果を平均すると、彼らの反抗期は、13.33歳に反抗期が始まり、15.68歳に落ち着くことが分かりました。たった2年間の反抗期。彼らは大変親と仲良しのようです。

●10代男の子は、日本大好き。

「どこの国に生まれ変わりたいか?」と10代男の子に聞いてみました。結果、1位はダントツで「日本」(37.5%)でした。女の子の方も日本好きだが、女の子の1位が「アメリカ」であることを考えると、男の子は特に日本好きと言えます。

彼らに、「日本のどこが好きか?」を聞いてみると、1位「治安の良さ」、2位「文化・伝統」、3位「日本語」、5位「技術力の高さ」でした。上位に位置するのは、どれも日本が昔から持っている価値。決して彼らが、日本の特別な面を評価しているわけでないことが分かります。6位の「自然」、7位の「温泉」、13位の「寺社・仏閣」、15位の「漢字」など、彼らにとって、日本が昔から持つ『あたり前』の長所は、大きな魅力になっている。女の子が「他の国よりマシ」という相対的な視点で日本好きになっているのに対し、男の子は日本の絶対的な価値を認めているようです。

●10代男の子の『なりたい職業』第1位は、プログラマー

10代男の子のなりたい職業の第1位は「プログラマー」でした。上位に「専門性」を必要とする職業が多く選ばれています。専門スキルを持つ「プログラマー」「コンピューター関係」「研究者」「システムエンジニア」「自動車整備士」。資格を必要とする「公務員」「薬剤師」「弁護士」「教師」「医者」「パイロット」。特別な才能を持つ「アーティスト」。彼らが『手に職』願望を大変強く持っていることがわかります。8位に専門性を持たない「(専門性のない単なる)会社員(サラリーマン)」がランキングされていますが、たったの5名に過ぎませんでした。
日本を取り巻く閉塞感のため、彼らは食いっぱぐれる可能性の低く、比較的自由度の高い専門性ある職業を選ぶようになっているようです。

※なお、博報堂生活総合研究所ではこれら調査結果をまとめた「10代のぜんぶ」という書籍を、1月半ばに出版の予定です。
ニュースの詳細
http://www.hakuhodo.co.jp/news/pdf/20041221.pdf