高橋源一郎おかわり『官能小説家』

先日読んだ『日本文学盛衰史』とペアで読む本ということで、土曜の午後から夜にかけては『官能小説家』を読んだ。おもしろかった。
『日本文学・・・』のほうが、まぁややこしいことはともかくとして、ぐっとくる青春小説だなあと思って読めたのとおなじいみで、『官能小説家』のほうは、やはりまぁややこしいことはおいておいて、ぐっとくる恋愛小説だった。サングラスをかけた現役作家がカルチャーセンターの小説教室の生徒と不倫する話というと、個人的には、金井美恵子『文章教室』がデフォルトで入ってしまっているので、いまさらぐっとくる恋愛小説だなあなどと暢気に言ってていいのか、と、用心深くなってしまいもするのだけれど、こちらももう年をとってしまったので、小説は小説なんだから、小説を読んでいちいち用心したって仕方ない、だいいち誰に対して用心する必要もあるまい、という気になって、ようするに、金井美恵子を読むときは金井美恵子を楽しく読むのと同じように、高橋源一郎を読むときは高橋源一郎を楽しく読むことにしておく。
ところでこの小説、もとは朝日新聞の連載になってたはずで、そのとき読むこともできてたはずなのだけれど、連載時はチラッと見てスルーしていた。で、目の焦点をあわせずにぼんやりとときどき眺めていると、どうもいくつかの次元の物語がかわるがわる進行しているようで、ただ、恋愛小説してる部分を見たときは、これはおもしろそうだからあとでちゃんと読もう、と思い、また、鴎外だの一葉だの漱石だのが出てきてるようなのを読んで、これは『日本文学・・・』の姉妹編なのだな、だからまずそちらを読むのだな、と、思ったものだった。で、それからながいながい年月がたち・・・
文庫になったところをえいやっと読んでみたら、なんというか、これを新聞連載の細切れで毎日読めというのは無理な話ではないかと思った。でもまあ、この恋愛小説っぷりは、新聞小説だからサービス精神を出したということなのかしらん。
や、でも、まぁようするにむつかしくかんがえず、ぐっときた、という感想。

官能小説家 (朝日文庫)

官能小説家 (朝日文庫)