児童虐待の件数を交通事故の件数と比較してみる

「平成15年度厚生労働白書」
http://wwwhakusyo.mhlw.go.jp/wpdocs/hpax200301/b0043.html

これまで児童虐待の定義は明確ではなかったが、2000(平成12)年5月に制定(11月施行)された「児童虐待の防止等に関する法律」において、児童虐待は保護者による身体的虐待、性的虐待、保護の怠慢(以下「ネグレクト」という。)、心理的虐待の四つの類型に定義された。

図表2-2-8によると、児童虐待の対応の中心機関である全国の児童相談所において2001(平成13)年度に処理した児童虐待相談は、23,274件と前年度の1.3倍となっており、依然増加の傾向にある。こうした児童虐待の急激な増加は、あいつぐ子どもの虐待死を伝える報道等によって関心が高まり、相談・通告が促進されたことの影響も考えられる。東京都「児童虐待の実態」(2001年(以下「東京都調査」という。))によると、虐待の重症度 (注) 別件数では、生命の危機があるとされるものは全体の3%であり、軽度虐待・虐待の危惧ありとするものが全体の54%に上っており、死亡事例として広く報道されるものは氷山の一角であるともいえる。2001年度に全国の児童相談所が処理した児童虐待の内容別相談件数は、身体的虐待10,828件、ネグレクト8,804件、性的虐待778件、心理的虐待2,864件となっており、過去と比較するとネグレクトが増加傾向にある。また、被虐待児の年齢構成では、0〜3歳未満が2割、3歳から学齢前児童が3割で半数を占めている。こうした虐待行為を行った主たる虐待者は実母が6割を占め、経年的にみてもその割合が増加している。

というわけで、ちょっと古いデータだけれど、相談件数で行くと2万件台(「16年度白書」でもそのくらいですなhttp://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/04/dl/2-1.pdf)、
死亡者数は、↓この記事で行くと、
http://news.goo.ne.jp/news/sankei/shakai/20050701/m20050701020.html
去年の数字で、49件、51人、と。
あるいは以前ここにとりあげた数字で行くと、
http://d.hatena.ne.jp/k-i-t/20050204#p1
「昨年の児童虐待、最多の229件 死亡は51人」だと。これは、警察庁発表の、「摘発件数」ですな。被害者数は239人。

いっぽう
「平成16年版 交通安全白書」 
http://www8.cao.go.jp/koutu/taisaku/h16kou_haku/genkyou/01010101.html#h01-01

15年の交通事故死者数は7,702人と第7次交通安全基本計画の目標を2年度目で達成した14年を更に下回り,昭和32年の7,575人以来46年振りに8千人を下回った
・・・
なお,平成15年中の死傷者数は118万9,133人と12年ぶり減少した14年から再び増加に転じた
・・・
このほかに,事故発生後30日以内に死亡した者(30日以内死者)の数を集計したものがあり,平成15年の30日以内死者数は8,877人となっている。


というのを、ごく単純に比較してみることがかりにできるとすると、
相談件数2万人、摘発件数230件・被害者数240人、死亡者数50人、という児童虐待問題は、
問題のサイズとしては、
死傷者数120万人、死亡者8000人、という交通事故問題の
50ぶんの1とか、100ないし150ぶんの1とかのサイズ、という言い方もできなくもない。
しかも、
児童虐待の相談件数2万人、の中には、

(注)虐待の重症度

1 生命の危機あり・・身体的虐待等による生命の危険に関わる受傷、ネグレクト等のために衰弱死の危険性があるもの

2 重度虐待・・今すぐには生命の危険はないと考えられるが、現に子どもの健康や成長、発達などに重要な影響があるもの(可能性を含む)

3 中度虐待・・継続的な治療を要する程度の外傷や栄養障害はないが、長期的にみると子どもの人格形成に重大な問題を残すことが危惧されるもの

4 軽度虐待・・実際に子どもへの暴力があり、親や周囲のものが虐待と感じているが、一定の制御があり、一時的なものと考えられ、親子関係には重篤な病理がみられないもの

5 虐待の危惧あり・・暴力やネグレクトといった明らかな虐待行為はないが、「たたいてしまいそう」「世話をしたくない」などの子どもへの虐待を危惧する訴えがある、又は状況等からそのおそれがあるもの

の、4や5のケースがはんぶんいじょうをしめている、つまり

生命の危機があるとされるものは全体の3%であり、軽度虐待・虐待の危惧ありとするものが全体の54%に上っており、

なわけだ。

もちろんこの比較はいかにも乱暴なのだけれど。