http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/edu/news/20050811ddm002040009000c.html
不登校:対策、「復学重視」に変化も フリースクールも評価−−文科省
不登校の小中学生の割合(出現率)は、この3年間でわずかな減少にとどまった。10日公表された文部科学省の学校基本調査。学校に行かない子どもに、文科省は「復学」をすすめるが、フリースクールの有効性も指摘される。不登校対策の模索は続く。「『必ず元気になって』『明日は来る?』という同級生の言葉が苦しかった」と神奈川県内の小学5年の女児(11)は振り返った。学校を休みがちになったのは2年生の2学期から。「級友といても、自分がそこにいる気がしなかった」と言う。
「分からなければ質問して」と先生に言われても手を挙げられない雰囲気。友だちとの会話はお互い「自分が上」であることを示そうとするようで気が抜けなかった。級友からの激励の手紙は逆に重圧になったという。
フリースクールに通い始めたが、「学校に戻そうという雰囲気について行けず」にやめた。今は1時間かけ、県外のフリースクールに通う。女児は「自由にやりたいことを応援してくれる雰囲気がいい」と話す。
フリースクールの有効性については、中央教育審議会の義務教育特別部会で、フリースクールへの通学も就学義務を履行したとみなすことについて検討課題とするなど、復学対策を自治体に求めてきた文科省側の姿勢にも変化の兆しが見える。
ただ、同部会で意見陳述した「百ます計算」で知られる陰山英男・広島県尾道市立土堂(つちどう)小学校長は、休ませないことで不登校を激減させた知人の校長の体験談を披露。不登校の兆候を示した時の学校の早期対応の大切さを強調している。【野倉恵、千代崎聖史】
保健室登校は出席となり、適応指導教室などへ通うのも出席扱いとなる。学校に行きにくい子供はもっといる。行政は復学への取り組みに予算や時間を相当注いできたが、多様な育ち方を認め、支援することこそが時代の流れ。教育行政もそれをきちんと軸足に置くべきだ。
◇森田洋司・大阪樟蔭女子大教授(教育社会学)の話
不登校の子どもに限らないが、彼らに共通するのは、自己肯定感の低さだ。問題点を指摘して改めさせることに比重が置かれすぎている日本の教育観、子育て観に問題の根っこがある。さまざまな人生の歩き方について考えさせる時間をつくってあげることが肝要だ。
◇大学・短大進学、初めて過半数
学校基本調査では、大学・短大への進学率が51・5%で過去最高となり、初めて5割を超えたことも分かった。「専門志向」を反映し、大学院の学生数も25万4000人で最多、社会人学生は4万5000人(17・7%)を占めた。女子学生の数も全体に占める割合も、大学、大学院のいずれでも過去最高を記録。大学は100万9000人で前年度比0・2ポイント増の40・2%、大学院は7万6000人で0・5ポイント増の29・8%だった。
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◇学校基本調査・主なデータ(今年5月1日現在)
<過去最高>
●大学・大学院の学生数 286万5000人
●女子学生数(院含む) 108万5000人
●高等学校等進学率(通信含む) 97.6%
●大学等進学率(新規高卒者) 47.3%
●大学・短大進学率(既卒者等含む) 51.5%
<過去最低>
●小学校児童数 719万7000人
●中学校生徒数 362万6000人
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■ことば
◇不登校
年間30日以上の欠席者で心理的、情緒的、身体的、社会的要因・背景から登校しない、あるいはできない児童・生徒を指す。病気や経済的理由による場合は除く。
毎日新聞 2005年8月11日 東京朝刊