キッザニア東京:子ども限定・仕事体験テーマパーク、どんなところ?

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キッザニア東京:子ども限定・仕事体験テーマパーク、どんなところ?
 ◇制服着て70職種、報酬は施設内通貨−−究極のごっこ遊び
 子ども限定の仕事体験テーマパーク「キッザニア東京」が今月、東京都内にオープンした。制服を着て実物さながらの機材を使い、子どもたちは“究極のごっこ遊び”を楽しみ、親は「教育的」と満足そう。ニート85万人の時代、遊び心は未来の職業人を育てるのか?【望月麻紀】
 ◇2〜12歳対象に
 キッザニア東京は、株式会社キッズシティージャパン江東区豊洲の工場跡地約6000平方メートルに、スポンサー43社のパビリオンを設置。担当スタッフの指導の下、70職種を体験できる。主な対象年齢は2〜12歳で、16歳以上は「働けない」。
 緑色の手術着をまとった子どもたちが、腹腔(ふっくう)鏡手術の機器を操り「胆石の除去」に挑戦する。一方、街の中では時折、火災が発生し、消防士姿のちびっ子が駆けつけて放水する。お菓子を自分で作れる工場もある。働けば施設内通貨がもらえ、デパートや運転免許試験場で使ったり、銀行に預けたりもできる。
 子どもたちの感想は「お金を増やすのが楽しみ」(小2男児)「料理が楽しいと気付いた」(小3男児)「赤ちゃんのお世話が楽しかった。保育士になりたい」(小2女児)など。親も「働かなければ稼げないので、金銭感覚が養えていい」「他のテーマパークよりも教育的なのがいい」。入退場の管理が厳しいため「安全安心なのが何よりいい」と総じて評判だ。
 ◇メキシコで誕生
 同社によると、キッザニアは99年にメキシコで誕生。年間約80万人の入場を維持し、初の海外進出が東京だ。住谷栄之資社長は「かつては子どもも掃除や食事の準備など家庭での役割があり、隣には八百屋や魚屋があって、地域で怒られ、ほめられて育った。そんな体験ができる場所を提供したいと考えた」と話す。
 1日2部制で平日1部は学校などの団体利用のみ。一般入場料は土休日2〜3歳1500円(平日1200円)、4〜15歳3000円(同2400円)、16歳以上2000円(同1600円)。年内の土休日の予約はほぼ完売の人気ぶりだ。
 ◇修学旅行生に伝統工芸指導/地域の事業所や店舗で勤労−−公的施設や学校でも試み
 働く体験施設といえば03年度、独立行政法人雇用・能力開発機構京都府に開設した「私のしごと館」もある。建設費581億円、年間運営費15億円。入館者数は約36万人で、7割が修学旅行など児童・生徒の利用だ。
 キッザニアより対象年齢がやや高く、中学生が中心だが、小3以上を対象に40職種の仕事体験もできる。担当者は「うちは西陣織や組みひもなど、京都の伝統工芸の技能士ら実際に働いている人が指導してくれる」と違いを強調する。
 中学校でも職場体験は行われている。国立教育政策研究所生徒指導研究センターの宮下和己総括研究官は「生徒にとっては、自然や社会に接する体験を補い、働いている人に接することで勤労観や職業観をはぐくむのが目的だが、学校や教委が地元の事業所や店舗に協力を頼み、地域の教育力を掘り起こすのも狙い」と説明する。
 ただ、受け入れ先の事業所探しは大変。事業所側には負担に見合うメリットが見えにくいからだ。また、保護者の中には「むしろ学習時間の確保を」という意見もあり、職場体験の実施状況は04年度、公立中91・9%に対し私立14・1%、国立46・2%(同研究所調べ)にとどまっている。
 ◇行くだけではだめ−−キャリア教育に詳しい渡辺三枝子筑波大教授(キャリア心理学)
 施設に行くだけでは意味がない。子どもの感じたことを聞き、親も「働くこと」について話すきっかけにしたい。また家庭で家族のために働くといった、最も身近で、お金が目的でない仕事を経験させることも大事だ。
 ◇働く意欲の喚起を−−村上龍さんの著書「13歳のハローワーク」と同名の公式サイトを運営する代田昭久さん
 施設は仕事を知る一つの機会にはなるが、今必要なのは「あこがれ」を実際に働く「意欲」につなげること。我が子と語るのも大事だが、隣の子にも自分の仕事を伝えるような、そんな教育力を高める必要がある。
毎日新聞 2006年10月12日 東京朝刊