世界史の狡知。5年後を考えてわくわくしようと考えてみる。不平等を実感すべき地方進学校の高校生たちに、受験とは関係なく世界史的視野を70時間も集中的に叩き込むチャンスだ。

たとえば「教育基本法改正」なんて、現代史的な事件が現在進行形で起こっている。いうまでもなくこれはたんなる国内問題ではなくて、世界史的な視野で捉えるべき事件である。かつ、意図してかどうかは別として、結果的には「教育基本法改正」問題をすすめていくための煙幕として履修不足問題さわぎが使われたわけなので(いくらなんでも、「教育基本法改正」問題のほうが「履修不足」問題より3ぜんばいぐらい重要なはずなので、マスメディアの取り上げ方のアンバランスはやはり客観的にあったというしかないと思うけどどうかね)、いろいろないみにおいて幾重にも割を食っている地方公立進学校の高校生たちは、ぜひ、世界の不条理の中に自らを位置づけ、そこでいかなる態度をとるべきかを見据えるための視座として、身をもって世界史的パースペクティブを獲得していただきたい。高校の先生がたは、ぜひ自信を持って世界史を存分に教えていただきたい。高校生たちは2、3年後には選挙権を持つし、5年後ぐらいには社会人になったり、地元に帰って母校の教師になるものも出てくるだろう。世界史の先生になろうというやつもでてくるかもしれない、ていうか当然出てくるわね。補習を受ける進学校の生徒が8万人もいるわけだからね。彼らにとって、この集中的な「補習」(と、ひょっとしたら受験に失敗してすごす1年間の浪人生活)は、受験競争の中にとつぜん降ってわいた夏休みの冒険のような経験になる可能性があると思う。

検索で適当に出てきた地方紙のコラム。
http://www.agara.co.jp/modules/colum/article.php?storyid=114941

高校の履修漏れ 教育の原点考え直す好機に
 各地の高校で、必修科目の履修漏れが明るみに出て、騒動になっている。県内でも開智、智弁和歌山(ともに和歌山市)、高野山高野町)、近大付属新宮、県立新宮(ともに新宮市)で、情報や世界史などの科目が未履修となっていた。
 これで終わりなのか。まだ隠されている部分があるのか。不安に思う生徒や保護者も少なくない。
 学習指導要領に沿った勉強をしていないことで、卒業や進学に影響が出るのか、生徒が不安に感じるのは当然だ。保護者とて同じ気持ちだろう。学校は、この不安を重く受け止めなければならない。
 気になるのは、発覚に至る経緯である。当初は、県教委も高校も「履修漏れはない」としていたのに、後になって事実を認めた。生徒や保護者からの指摘で、渋々認めた高校もある。
 私立の4校は、県の問い合わせに対し、全校が「問題なし」と回答していた。しかし、一部の高校では、県の総務学事課が外部からの指摘に基づいて問いただして初めて履修漏れが判明した。生徒に「嘘をつくのはよくない」と指導する立場の教育者が、自ら虚偽の報告をしていたのだ。
 県教委の対応も、褒められたものではない。文科省から県立校の状況を確認するよう要請されていたにもかかわらず、特段の調査もせずに「該当はなかった」と回答していた。「学校側を信頼していた」というが、とんでもない手抜きである。
 その後、保護者からの指摘によって新宮高で履修漏れが判明。あらためて調査に乗り出す結果になったのだから、ずさんな対応と言われても仕方がないだろう。
 おまけに、実態を調べるように通知を出した文科省も、4年前に履修漏れの事実を把握していたのに、その後、何の手立ても講じていなかったという。教育行政の担い手としての責任放棄である。
 高校が本来履修すべき科目とは別の授業を教え、それが発覚した揚げ句、生徒には新たに補習が課される。生徒たちに責任はないはずなのに、無責任な大人のしわ寄せが来てしまった。
 文科省は補習時間を軽減する救済策を出したが、それで彼らの負担が消えたわけではない。逆に、まじめに必修科目を学んできた高校生には不公平感も残るだろう。
 この問題に責任を感じて、自殺した校長もいる。未履修科目を履修したという虚偽記載が見つかれば、合格後でも入学を取り消す意向を示した大学もある。それほど事態は深刻である。
 けれども、ピンチはチャンスでもある。今回の騒動で、現在の高校教育が抱える問題点が明らかになり、その解決のきっかけがつかめたら、それはそれで意味のあることだろう。そのためには、問題点をすべてさらけ出すことだ。県教委も学校も、問題点を出し合って、解決の道を探ればよい。
 いうまでもなく、高校は大学受験のためだけに存在するのではない。人間としての力を付けるために、子どもたちに何をどのように教える必要があるのか。教育行政も現場も、そのことをもっと真摯(しんし)に考えるべきだ。
 今回の騒動を「教え育てる」という教育の原点を考え直すきっかけにしなければならない。(E)
('06/11/15)


あー、でも、その70時間を使ってみっちりと「フランクフルト学派の陰謀」なんかを論じる先生もいたりするかな? あいたたた。