『男はつらいよ 浪花の恋の寅次郎』みた。よかった。きのうみた『寅次郎の縁談』のもとネタだった。

きのうみた『寅次郎の縁談』が、どうももうひとつしっくりこなかったので、同じ松坂慶子の旧作のほうをまだみてなかったのを引っ張り出して見た。やはりよかった。

男はつらいよ 浪花の恋の寅次郎 [DVD]

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舞台が大阪なので、芦屋雁之助はじめ大阪の芸人や役者がいい味を出している。松竹の映画だから松竹の芸人ということなのかね。しかし、おもろうてやがてかなしきという感じで、しみじみといい。松坂慶子もちょうど盛りの頃で、浪花の薄幸の芸者という役回りはぐっとくる。
ところで、きのうみた『寅次郎の縁談』がもうひとつしっくりこなかったというのは、寅さんが松坂慶子に岡惚れしたり勘違いして振られたりするいつもながらのパターンが、ほんとにパターンとして再現されてるだけで、なんていうか情感として乗っていけるような感じがしなかったんで、「ああ、寅さんもシリーズが終わりに近づいて、寅のエピソードと満男のエピソードとで物語が分散してしまって、もはや寅さんの振られる話だけで物語をぐいぐいとドライブしていく力はなくなってしまったのだなあ」と淋しくなっていたりしたのだけれど、今日、『浪花の恋の寅次郎』を続けて見たら、『寅次郎の縁談』は『浪花の恋の寅次郎』をなんとなく下敷きにして変奏しながらセルフパロディみたいにしていたのだとわかった。瀬戸内の小島で出会う、とか、松坂慶子が関西で座敷商売(浪花の芸者/神戸の料理屋の女主人)とか、身寄りがない、とか、寅さんと松坂慶子がデートでお寺/神社に行く、とか、急にとらやに訪ねてきて店を手伝う、とか、なんかそういうところ。あと、『浪花』のほうで寅が言っていた口上の言い回しを『縁談』のほうで松坂がいきなり覚えている、とか。そういうやりくちが寅さんという作品としてありなのかなしなのかはともかく、『縁談』は『浪花』の記憶こみで見るべきものだったようなのである。