『打鐘 男たちの激情』みた。なるほど黒沢清の幻の傑作。

打鐘(ジャン)?男たちの激情? [VHS]

打鐘(ジャン)?男たちの激情? [VHS]

インタビューなどでは幻の傑作みたいなことになっている、Vシネ期の作品。競輪のスポ根もの。これをいかに正しいアメリカ娯楽映画として成立させるか、ということで、たしかに正しいスポ根になってる(いや、つまり、日本のスポ根はアメリカのスポーツ映画とは違ってくるのだけれどそれも踏まえたうえで)。つまり、職人的なプロ意識と厳密さで「正しいスポ根」の規範を正確に再現して、簡潔にして純度の高い原理主義的な娯楽作を作ってしまっている。出てくる登場人物のキャラクターとかひとつひとつのエピソードとか場面とかストーリー展開とかは、いちいち「見たことあるような」ものの組み合わせなのだけれど、それがクライマックスの対決に向けていちいち正確に、決まるべきところにビシビシと決まってダレることがない。実は最後の一番クライマックスの頂点のところでもうひと盛り上がり、雷鳴でも鳴って欲しかったのだけれど、まぁ、そのへんはVシネマという限界もあり、競輪という題材の限界もあるだろうし、原作という縛りもあり、ひょっとしたら原作どおりなのかもしれないけれど主人公の必殺技(?)っていうかプレイスタイルの「先行一本」がいまいち映画ばえしないってのもあるだろう。ていうか、クライマックスに向けて正確に盛り上げていって頂点まで到達したらあとは簡潔に終わる、というのがいいってことかもしれない。
ともあれ、たしかによかった。