通勤電車で読む『摘便とお花見 看護の語りの現象学』。学生さんがインタビューを分析するときのお手本にいいかも。

去年ぐらいに、れいによってツイッター上か何かで、いいという感想を見かけて、「シリーズ ケアをひらく」の本ということもあり買っていつつ、看護の語りってしんどそうかなと思って積読になっていたのだけれど、先日また『仙人と妄想デートする』という同じ著者の人の本が出て(これは書影の写真だけ見ると装丁は似ているけれど買ってみたら版型が違って、なにより出版社が違って、つまりてっきり「シリーズ ケアをひらく」で続編が出たのかと思ったら、ちがったようなのだけれど)、やはりおもしろかったという感想など見かけると、やはり読んでみようかという気になり、とりあえず前のほうの本から通勤電車で読んだ。
で、インタビューは4人の看護師さんに対するもので、ひとり2章ずつというあんばい。基本、だらだらと構造化されてないインタビューを行って、それを分析する、という。で、インタビューから何を読み取っているかというと、語りを構成する言葉の配置とか、この語りがいろいろなエピソードをどんな二項対立で分節してるかとか、どのような「時間性」が語られているかとか、そういうことで、なるほど「語りの現象学」というかんじはある(方法論に関する付章の註で、エスノメソドロジーに近いとか言っている)。
でまぁやっぱり、出てくる4人の看護師さんたちがみんな「死」に近いところで看護をやっている人たちだったりして(ターミナルケアみたいな?)、話題もつごう「死」のほうに引きずられて、それでハイデガーとかたとえば出てくると、なんかやれやれだな、と思ったりもして、もうちょっと歯医者さんとか眼医者さんとか、美容整形とかまぁなんでもいいけど、まぁ町のふつうの内科小児科の医院でもいいわけで、ようするに「死」と直接あんましかんけいないところでの看護のはなしだってあるだろうし、そういうところでなおフッとよぎる「死」の影、みたいなほうが、「看護ってそうなのか」と思うんじゃないかなとおもうのに、ちょっとそのへんは内容主義的なかんじがした。
以前、卒論でナースのインタビューをやってた学生(以前ここ(http://d.hatena.ne.jp/k-i-t/20150512#p1)で、「けっこうがっつりしたインタビューをした学生さん」として言及した学生さん)が書いてたときに、もしこの本があったら、勧めてただろうなと思う。