通勤電車で読む『トヨタ生産方式の逆襲』。これは面白かった。

トヨタ生産方式の逆襲 (文春新書)

トヨタ生産方式の逆襲 (文春新書)

トヨタ生産方式の本を読むシリーズ。これは面白かった。著者の人は、トヨタ社内にいたときには経理とか流通とか「生産調査部」とかにいた人で、工場というよりホワイトカラーの方の人。もう一つのアイデンティティは、トヨタ生産方式の生みの親である大野某という人の、右腕として働いた人物、の息子であると。息子だからなんやねんという話であるわけだけれど、それとはかんけいなく、この本は面白かった。
ていうか、この前とその前に読んだトヨタ生産方式の本を読んで、なんかしみったれた嫌な気持ちになってしまってたんで、それは、そもそもこの辺の本を読んでるのは自分や学生さんが身の回りで仕事カイゼンできないかと思ってるからで、つまり目線は工場で働いている人目線で読んでるんだけれど、なんか動きの一挙手一投足まで文句をつけられて気を抜く隙間をどんどん削られて「効率化」された挙句、「カイゼンで効率化して人減らし」みたいになったらリストラになるんか?そんなことを得々と偉そうに語られてもムカつくだけなんだけど、なんかの勘違いなのかなあ、まだ自分がトヨタ生産方式を理解していないからかなあ、とモヤモヤしてたわけである。ところがそのへんのことがちゃんと書いてあった。「動作改善の目的は何か?」という節のなかの:

たしかに作業者の動きを1秒単位で管理して効率化していく動作改善をつきつめていけば、省人化は進みます。その結果、コストが改善されると一般的に思われがちです。
でも私は、人減らしに加担して報酬をもらうことには抵抗感があります。人員削減をもたらすカイゼン活動を推し進めれば、そこで働く人たちにすれば、いずれわが身に火の粉が降りかかることを恐れて、カイゼン活動自体に真剣に取り組まなくなります。
・・・
逆に、カイゼンをして生産能力を上げた結果、働く人がハッピーにならなければ積極的に協力などしてくれません。仕事が楽になった。外注していた仕事が戻ってきて職域が侵される不安から解放された結果、会社も利益が出て、給料やボーナスも増える。だから、カイゼンをやろうぜ − という話にならないといけないのです。

やっぱりそうですよね。そりゃそうだ。そこを外してケチくさく小うるさいジジイの説教みたいな「カイゼン」の勧めを滔々と語られてもムカつくだけでしょうと。
で、それはそれとして、じゃあこの本はどうかというと、この人はだから、工場の中の話というより仕入れから営業販売までの全体の中での「カイゼン」「カンバン」という話をしている。具体例も、そういう話が多くて、トヨタ方式で顧客のニーズに答えたら販売実績が上がったみたいな話があれこれあり、そのへんはトヨタの話でありつつ、ちょっとサトカメの話でも読んでいるかのような楽しさがある。