このまえ買ったのをようやく読んだ。
松浦理英子は
松浦理英子なのである。初期のころのお話のように、お話は人間関係、
レズビアン的(と言っておくことにするけれど)でSM的な関係、権力関係、
三者関係、のようなものに抽象化されていて、その探究がそのままお話をうごかす、と。ただそこにまた初期のころとは違う仕掛けがあって、そのお話じたいを語る語り手のような「わたしたち」がいて、そこもまた
松浦理英子的な、
腐女子的というかおたく的というか同人作家的というかそういう者(たち)であって、というかこの小説はある私立高校の女子クラスの生徒たち − わたしたち − の物語で、わたしたちのグループの中心にいる日夏、真汐、空穂の三人からなる〈わたしたちのファミリー〉 − 日夏=パパ、真汐=ママ、空穂=王子、という見立て − をめぐるわたしたちの妄想や記述からなるということで、そういう枠組みが、
松浦理英子の初期のたとえば『
ナチュラルウーマン』みたいな透明で抽象的な関係構造の探究を、奇妙に不透明化しているようにみえるしその不透明さやある種のよるべなさがお話に − 初期作の緊張や切迫とはことなる − ふくらみというか奥行きというか、そういうのをもたらしてもいるように思う。とかなんとかいうのは、まぁ読めばわかるていどの仕掛けのおはなしで、それはそれとして、ようするにとてもよかった。