通勤電車で読む『反「大学改革」論』。まんなかのパートはよかった。

反「大学改革」論:若手からの問題提起

反「大学改革」論:若手からの問題提起

ぱっと開いて字が小さかったので、うーん、と思ったわけである。で、第1章、Twitterなんかで評判だった、PDCAサイクルは「合理的」か、という章を読んで、また、うーん、と。つまり、おっしゃる理屈はそりゃそれなりにそうなんだろうけど、正しいんだろうけど、そもそもその手の正しさに聞く耳を持たない相手だから厄介なんで、まぁいまの「大学改革」を進めようとしている人というのが誰かはよくわからんにせよ、たぶんそういう正しい理屈に対する嫌悪感なり軽蔑心なりを持っている一群の人たちというのがしかるべきところにいるような気がして(まぁ言ってみればこの社会のすくなからぬふつうの人たちはじつは基本的にはそうであり)、まぁそういう人たちにたとえばPDCAサイクルはそもそも・・・等々言ってみても、嫌悪の炎に油を注ぐだけのようにも思える。高等教育論に関して自分が知らなかったことをいろいろ知れた、よい本だと思うのだけれど、まぁしかし、この本を読んで「そうだそうだ!」と溜飲を下げるような読み方は、あまり事態をよくしないだろうなあ(でもそういう読み方を誘いかねないなあ)とは思った。
それはそれとして、まんなかのパートは具体的な学生・院生のおはなしで、具体的な事例や実証的なデータなどもあり、そこんところはおもしろかった。例によってやはり井上論文はおもしろかったけれど、たぶん外連味の狙い具合(「なんとイエス」みたいな言い方・・・)とか「砦/繭」「ポスト代表制」みたいな概念の出し方とか整理の大胆さとかに、ある種の芸風を感じるからのような気もする。ともあれ、東『一般意思2.0』にせよ山崎『コミュニティデザイン』にせよ國分『来たるべき民主主義』にせよ、あるいは木野先生の「学生FD」にせよ、自分がピンと来なかったり、ちょっと関係ないかなと思ったりしたような道具立てを使いつつおもしろい話になっていて、おもしろかった。