理科教育崩壊 −天動説を支持する小学生は4割−

上↑でいってる、「ある調査」ってのは、この調査ですね。これは、「理科教育」についての調査であるわけですね。「自然や社会と交わるといった体験が驚くほど希薄になっています。」みたいな文脈ではないですね。
http://www.astroarts.co.jp/news/2004/10/21geocentric_theory/index-j.shtml
http://centaurs.mtk.nao.ac.jp/~agata/research1/index.html

 小学4〜6年生の約4割は「太陽は地球のまわりを回っている」と考えていることや、半数以上が月の満ち欠けの理由を理解していないこと、また、日没の方位が西であることの理解が6割〜7割程度であるなど、基本的な天文知識の理解が不足している実体が明らかになった(9月20日盛岡市での日本天文学会記者会見にて発表)。

 縣秀彦(国立天文台)等の研究グループは2001年6月〜今年6月に、全国8都道府県(14校)の小学4年生から中学1年生合わせて1692人に、理科の好き嫌いや天文の知識について3種類のアンケート調査を実施した。

 そのうち北海道、長野県、福井県大阪府の計4校348人を対象に、太陽と地球の関係の理解を「地球は太陽のまわりを回っている」、「太陽は地球のまわりを回っている」の2つの文章から正しいほうを選ばせたところ、前者を選んだ児童は56%にとどまり、42%は「太陽は地球のまわりを回っている」を選択した。また「人工衛星と同じように地球の周りを回っている天体は?」との問いに、月と回答した児童は39%にとどまり、他の選択肢の火星が27%、太陽が24%だった。茨城県の4校733人に対しては、太陽と地球の関係を文章ではなく図に示して選ばせたところ、40%の児童が地球の周りを太陽が回っている図を選択した。これらの結果からおよそ4〜5割の児童が地球中心の宇宙像を持っていると考えられる。

 一方、6都道府県の計720人に月の満ち欠けについて聞いたところ、「地球から見て太陽と月の位置関係が変わるから」と正しい解答を選んだのは47%と半数以下だった。また、同調査で回答分布で調査地域によって有意な差が生じた質問に、「日が沈む方位はどれですか?」がある。選択肢として南、東、西、わからないを用意した。日没の方位が西であることの正解者は全体で73%だが、理解に地域差がある傾向がみられた。調査結果には都市部の学校ほど正解率が低くなる傾向が見られ、日没や日の出を見ることが日常体験として失われている影響があると考えられる。

2002年施行の現行学習指導要領では、地上から見た太陽、月、星の動きの観察といった天動説的な内容しか扱っていないため、地球が丸いことも、自転していることも、公転していることも小学校理科で習うことがない。次回の改定時には太陽、月、地球が球体であることや、その全体像も教えるべきで、地上から見た天体の動きと宇宙からみた地球の動きの関係にふれるようにすべきであろう。この調査結果は、日本の理科教育が抱える「日常知と学校知」、「文脈の欠如」という二大問題(*)の典型的な事例として注目されている。

縣 秀彦(国立天文台

詳細は「科学」(岩波書店)2004年7月号参照

この研究に関するドキュメントをダウンロードしてご覧いただくことができます。
 → http://centaurs.mtk.nao.ac.jp/~agata/research1/Detail.pdf(PDFファイル、115KB)