きょうだい喧嘩は恋人に対する暴力行為の前ぶれ/破壊的行動を取る児童を治療する際には親のストレスレベルの把握が重要(CRN「ブラウン大学心理学ニュースレター」)

http://www.crn.or.jp/LIBRARY/NEWS/2004/0406.HTM

きょうだい喧嘩は恋人に対する暴力行為の前ぶれ
 
フロリダの大学生が行った最近の研究によると、きょうだい間の喧嘩が、後の恋愛関係における暴力行為につながることがある、という。この研究の指導者であるフロリダ大学バージニア・J・ノーランド博士は、「恋人への暴力行為に多大な影響を与えるのは、きょうだいへの暴力行為である」と話し、「きょうだいに対する暴力行為は何らかの結果をもたらし、その結果は時として深刻だということを親は知っておくべきだ。」とも言っている。研究では、女性よりも男性の方が多くきょうだいに暴力をふるうと回答されている。しかし、重要なのは性別よりも年齢である。年齢の近いきょうだいほど暴力的になることが多く、それが最も顕著なのは、年長者が10才から14才のきょうだいである。きょうだいへの暴力行為は、子供達が友達と一緒に外で遊ぶ時間が増えるにつれて少なくなる。また、きょうだい間のいさかいについて、親同士の暴力から及ぼされる影響は思いのほか小さかった。むしろ、親から子への暴力が強く影響している、とノーランドは述べている。

[Am J Health Beh 2004; 28(Supple.1): S13-23]


破壊的行動を取る児童を治療する際には親のストレスレベルの把握が重要


 研究者らは、反抗的行為障害(ODD-oppositional defiant disorder)の子どもの適応に対する母親と父親のそれぞれが与える独自の影響を調べた。特に子ども及び子どもの破壊的行動に対する母親と父親の反応の違いに重点を置いた。母親と父親の両方で測定した「子育てのストレス調査(PSI-Parenting Stress Inventory)」によると、子ども関連の質問項目(Child Domain)でストレス・レベルが臨床的に上昇しているのが見られたが、親自身に関連する質問項目(Parent Domain)においては、そのようなストレス・レベルの上昇は確認されなかった。
※PSIは子ども関連項目と親自身の関連項目に二分化されたグループからなる101項目の質問からなるストレスの測定法である。‘子ども関連項目’では、子どもとの関係を発展させようとする場合にフラストレーションがおこる行動上の問題を次の6つの小項目で評価する。子どもの適応性、子どもの受容度、子どもの要求、子どもの気分、子どもの注意散漫度、親への従順度。‘親自身の関連項目’では、子育てをしている中で親自身の問題からくるストレスを7つの細分項で反映する。うつ、子への愛情、役割の限定、社会的孤立、健康、配偶者との関係、親としての自信である。

 調査参加者は、診療所から紹介された3歳から6歳までのODD児童で、大型治療研究に参加している97家族のサンプルから抽出した。そこから、子どもが両親と同居し(n=D64; サンプルの68%)、その両親が共に治療前評価に参加している(n=D53; サンプルの51%)家族を選び出したものである。サンプル群の子どもの平均年齢は4.49歳で、83%が男の子だった。人種/民族的分布では、白人が77%、アフリカ系アメリカ人が17%、その他が6%だった。多様な心理測定法が用いられた。本研究から、破壊的傾向を持つ子どもの母親と父親の経験がいくつかの重要な点で異なることが明らかとなった。親と子どもの相互作用の観察では、親子が設定されたやりとりをしている間、子どもは父親に対してより従順だったが、子どもに対する反応については父親に比べ母親のほうがずっと敏感であった。反応の度合は、子どものリードに反応する親の積極的行動の総数として定義し、これには積極的に話すこと、身体に触れることが含まれている。回帰分析では、父親の親自身の関連項目によって測られたストレスが、母親、父親両方の子どもの破壊行動に関する報告を予測させるものだった。一方、母親の結婚に対する満足度は、子どもの母親と父親の両方に対する従順さについての行動観察を予測させた。母親は父親よりも、子どもの破壊的行動をより激しいものとして捉えており、子育てのストレスも高いと述べている。平均して、母親は軽度の臨床的うつがみられたが、父親の回答からみられるうつ症状は全体的に正常範囲内であった。母親、父親共に子ども関連項目でストレスが臨床レベルで上昇していることがうかがえるが、親自身の関連項目ではそれはなかった。最後に、母親、父親ともに結婚についての満足度が臨床的区分ではわずか下側にあり、これら両親が揃っている家庭では結婚に対する軽度の不満があることを示唆している。多面的な比較を行うための調整により、母親のストレスとうつ、父親のうつと結婚に対する不満の間にやや強い関連性が見られた。母親のうつは、父親の結婚に対する不満とも関係があった。「この診療所から紹介された学齢前児童サンプルでは、母親と父親が共に、子どもの行動が非常に破壊的で、問題があると認識している」と研究者らは言う。「これらの結果は、子どもに対する不安定な愛情など親と子どもの関係からくるいくつかの因子と子育てのストレスの高さを関連づけた過去の研究に照らしても重要である。特に、本研究は子どもの治療計画を立てる場合に、親、特に父親のストレスに対して注意を払うことが重要であることが明らかになった。」と研究者らは述べている。両親と子どもとの相互作用では、子育て行動に性差があらわれ、父親の要求からくる厳しさ、母親の結婚生活に対する満足度が子どもの従順度を左右しているようだ。これらの発見は、子どもの破壊的行動を評価する際には全体像をとらえた上でのアプローチが重要であることを強調するものである。

Calzada EJ, Eyberg SM, Rich B, et al.: Parenting Disruptive Preschoolers: Experiences of Mothers and Fathers. Journal of Abnormal Child Psychology, 2004; 32(2): 203-213.
E-mail: seyberg@phhp.ufl.edu.


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The Brown University Child and Adolescent Behavior Letter, June 2004
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きょうだいげんかもだめなことになってしまいました。
昔はきょうだいがたくさんいてきょうだいげんかをやっていたので子どもが健全に育った、いまは少子化で子どもがきょうだいげんかの経験がないから突発的暴力に走る、という説は、アメリカ心理学的に否定されたらしいです。