- 作者: 三浦展
- 出版社/メーカー: 洋泉社
- 発売日: 2006/04
- メディア: 新書
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編著者が前著で流行らせた「ファスト風土」というキーワードを口実にして、編者の10人の知り合いが各々自分の宣伝をした、というかんじの本。いくらなんでも、オレが設計した「ルイ・ヴィトン・ジャパンONE表参道」のビルは木が使ってあるから脱ファスト風土だ、みたいなこじつけは、あんまりだとおもう。
そのなかで、まぁかろうじて本代を回収できたなと思ったのは、都心の空きビルを再生させるみたいなはなしで、まぁビルオーナーや地域の企業とアーティスト・クリエーターを出会わせてゲリラ的に新しいことを起こしていこうみたいな、まぁ浮ついたといえば浮ついたすじがきなんだけれど、地方都市出身の著者が10数年ぶりに地元に帰ったら青春の思い出の詰まった商店街が無残に壊滅状態になっていた、さらば青春マイ・ロスト・シティ、みたいな泣かすエピソードや、クラッシュの「Lost in the supermarket」が好きだとか言って、
僕はスーパーマーケットで迷子になってしまった・・・というこの曲は、自分が迷子になったのか、スーパーマーケットの存在で街が迷子になってしまったのか、よくわからない。空洞化するイギリスの地方都市の乾いた空気が小気味よく伝わってくる。その音は、どことなく寂しいが、同時にそのスカスカ感へ安堵というか、気持ちよさというか、そういうものが同居している不思議な感覚なのだ。
そして、その感覚こそが僕らの世代に共通に響く通低音であるような気がする。僕らはそういう社会環境の変化の中で子ども時代を送り、大人になった。
とか言っているのは、ぐっときたし、あわてて著者略歴を見たら自分の2個下で、やはり世代感覚というのはあるのかしら、と思ったりもした。「Lost in the supermarket」が「スローテンポの曲」に聞こえる耳はどうかしているにせよ。この人の文章だけが、編著者の前著まで含めて救っているじゃん、と、自分には感じられた。