全国各地の芸術系NPOをサポートする「NPO法人アートNPOリンク」

http://www.dnp.co.jp/artscape/artreport/community/k_0605.html

美のデジタルアーカイブ 新連載〈地域づくりとアート〉
全国各地の芸術系NPOをサポートする
NPO法人アートNPOリンク」
影山幸一

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 地域を、アートを起爆剤に活性化させる新しい潮流が生まれています。この流れは以前からもあったことですが、今全国で活動が盛んです。新連載では全国各地でユニークな活動を続けるアートの地域活性化事業を12回の連載でお伝えします。指定管理者制度など、美術館の運営が問われている現在ですが、美術館以外でアート作品が自立する場や、それらを支える組織運営など各地固有のホットな事例をとおして、アートと市民の間にある課題を発見し、何か問題があれば解決のためのヒントを見出すことができればと思います。文化施策、美術情報管理、そして作品と人を結ぶアートコネクションの取組みに注目しながら、各地周覧の取材レポートです。おつき合い下さい。

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増えた見る場所とチャンス
 美術作品を鑑賞する場合あなたはどこへ行きますか? すぐに美術館と答えられる人はいるだろう。しかし、次の場所をなめらかに挙げられる人はかなりの美術愛好家だ。ギャラリー、公園、パブリックスペース、アートイベントそれだけでなく、さらに二次資料といえる画集、カタログ、ビデオ、DVDなどを図書館で熱心に見る人もいるだろう。またインターネットの画像などを自宅で楽しむと答える人もいるかもしれない。美術作品を見る場所とチャンスはメディアの発達によって増えてきた。しかし、にもかかわらず何かもの足りなさを感じるのは私だけだろうか。全国各地でアートをキーワードに地域振興事業が展開されている。何か面白そう。各地域の美術館を超えてクリエイティブな活性化事業を先導する組織もありそうだ。NPO(Non Profit Organization)など、市民力で活動しているところが目立つ。NPOとはどのようなものなのか。
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アートとNPOの結びつき
 アートNPOリンク事務局代表を務め、「第1回全国アートNPOフォーラムin 神戸」の発起人の一人であり、アートNPOの状況を広く知る樋口貞幸氏(以下、樋口氏)に全国のアートNPOの現状とアートNPOリンクの今後の展開などを伺うため京都を訪ねた。アートとボランティアをつなぐボランティアコーディネート組織 ARTS STAFF NETWORKの代表でもある樋口氏は、大学時代に京都で日本画を描いていたそうだ。またトヨタ・アートマネジメント講座(TAM)の卒業生でもあり、アートと社会を結ぶ必要性を感じていたようだ。そして時が流れ気が付けば常勤1名・非常勤1名のアートNPOリンクで、企画書や議事録作成など、多忙の日々である。“アートは社会革命だ”というアート側と、“NPOは市民革命だ”というNPO側、双方の主張が結びついて“アートNPO”が生まれるのは当然だと樋口氏は言う。アートNPOリンクの目的は、アートの力を広く社会にアピールしていくとともに、芸術文化を活動の核とするNPOの基盤整備、社会的ポジションの確立、政策提言を行ない、アートNPOの活性化に寄与することである。アートNPOの人材とは、一過性のイベンターではない。やる気と資質が必要だと言う。そのためにもやりたい人が継続できるようにする基盤作りがアートNPOリンクのミッションのひとつとなっている。2006年初年度の見込み収入は未定であるが1,000万円ほど。事業費と会員40数組の会費と寄付が見込まれている。社内印刷など非資金的協賛の提供もあるようだ。活動の記録は写真・ビデオのほか、フォーラムなどはテープ起こし後にテキスト化され、議事録、事業報告書、決算書、Webサイトなどに記載するものもある。アートということで目新しさを求められるが、目立たなくとも質の高い活動を忘れないようにしたい、と活力ある29歳の樋口氏は言う。
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アートは社会の課題を解決しない
 アート、なかでも音楽はクラッシックとコンテンポラリーが乖離しているように、同じ音楽というジャンルでも案外コミュニケーションが少ない。これは美術でも同様で、隣町のNPOの活動内容を何も知らないことがわかってきたと樋口氏が話す。アートNPOリンクは、各地のアートNPOにとっての情報センターであり、サポーターでもあるのだ。地域やジャンルを越えて、アートという共通項がつなぐ暗黙の信頼。また、樋口氏はアートが得意とするのは、地域に潜在する資源を顕在化させ活用するところであると言う。しかし、アートは社会の課題を解決しないとも。ただアートは混沌や課題といった非在を現前に見せてくれ、アートにしかできないことがあると、次のように語る。「アートのもつコミュニケーション能力、創造力、時代を先取る力は、次代をつくる新しい視点をもったコミュニティを産み出す。アートが多様性そのものであり、正解が存在せず、アイデンティティ脱構築を促すからにほかならない。解体されたアイデンティティは、アートによって生み出されたコミュニケーションによって再構築され、コミュニケーションとともに再解体される。コミュニケーションがアートによって誘発される。意識変革とコミュニケーションによって地域の魅力を創造する」と。
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■参考文献
NPO公式ホームページWebサイト(http://www.npo-homepage.go.jp/index.html)2006.5.10
NPO法人アートNPOリンクWebサイト(http://arts-npo.org/)2006.5.10
NPO法人日本NPOセンターWebサイト(http://www.jnpoc.ne.jp/)2006.5.10
ネットTAM Webサイト リレーコラム第16回「アート、社会にありき/社会、アートにみたり〜アートマネジメントは過激にいこう♪〜NPO法人アートNPOリンク事務局 樋口貞幸」
http://www.nettam.jp/main/00home/column/16/index.html)2006.5.10