生卵が出ないアメリカの吉野家。リスクの実態&感覚がちがうのだと。(ほぼ日「翻訳前のアメリカ」)

米国産牛肉の輸入再開とかなんとかかんとか言っているけれど、以前読んだこのコラムがおもしろかった。
http://www.1101.com/suzukichi/2004-02-19.html

・・・
このように、アメリカ市場にあわせて
メニューを多彩にしているYoshinoyaですが、
すずきちが目指すものは当然、「並つゆだく生卵」です。
並はレギュラー、"つゆだく"は ビーフ・ジュースですが、
ビーフ・ジュースを追加すると
なんと50セント追加料金です。
納得いかないまま、生卵はないのかときくと、
クリスティーナ・アギレラ系の顔が
豆タンク体型にのっかってるお姉さん店員が
「ありません」とスペイン語訛できっぱり。
きっぱり言われて思い出したのですが、
アメリカのレストランは生卵をだしません。
サルモネラ菌中毒の発生をおそれてのことでしょう
・・・
生卵がでてこない時点で気づくべきだったのでしょうが、
日本の日常をハリウッドのYoshinoyaで再現するという
アイディア自体に無理があったといえましょう。

こうなると、米国からの牛肉輸入禁止がとけて
日本の吉牛が復活することを祈るしかないのですが、
これは意外と長い道のりになるような気がします。
食べ物のリスクの大きさが、
アメリカと日本とで全然違うのです。

例えば食中毒を例に取ると、
厚生労働省の統計で日本での患者数は
過去10年の平均で年間約35000人。
死亡者数は同じく8.1人だそうです。
一方アメリカでは食中毒による入院患者数は約325000人/年、
死者数は5000人/年という数字が検索したらでてきました。
サルモネラ菌の死者だけで、年間500人以上でるそうです。

BSEの恐ろしさは未知のものであるという点につきます。
原因となる異常プリオンは、人体の免疫系には引っかからず、
発病までの潜伏期間は"とても長い"としかわかっていません。
そうなると今日現在におけるリスクの大きさを
どのように評価するかが大変難しい問題となるのですが、
食べ物が直接の原因で死亡することが稀である日本と、
食中毒事件などニュースにもならないアメリカ側とが
BSE対策で落としどころをみつけるのは大変難しい
ことのように思えます。


大雑把な比較ですが人口比を考慮しても、
アメリカ人が食中毒で死亡する確率は日本人の275倍。
感染者を出さないのがボトムラインで、
牛の全頭検査を当然と考える日本の行政当局と
そんなものやってられるか、と主張する米国当局の間には
食品の安全性一般に関して、
ひょっとすると275倍の実感ギャップがあるのです。

さらに言えば、マグロに含まれる水銀濃度の問題が、
日本人の食生活に全く影響を与えていないのと一緒で、
アメリカにおけるBSEは、
正面から取り組むには社会的な影響が大きすぎるという
事情もあります。

このギャップを埋める努力を日米当局双方がしないと
いつまで経っても禁輸がとけず、
ファーストフードとしての牛丼文化は
アメリカでしか生き残らないということに
なるかもしれません。
「生卵」抜きの牛丼文化がアメリカで生き残り、
日本人の食生活のボトムライン
失われたままになるのでしょうか?
なんだか面倒くさい世の中になりました。

たしかに、生卵(とかそのたの食中毒)でそんだけ死んでるんであれば、BSEもんだいなんて妄想としかおもえんだろう。
なっとくなっとく。
でも「ギャップを埋める努力」なんか抜きにして輸入再開ではあるのだけれど。