企業・塾が先行“放課後教室”…割高だが便利

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20060830ur05.htm

文部科学省厚生労働省は来年度から、全国の公立小学校で放課後も児童を預かることを決めたが、民間の企業や学習塾も最近、夜までの預かり事業に相次いで乗り出している。
 利用料は安くないが、預かり時間の延長や送迎、静かな環境などのサービスをアピールしている。現場を訪ね、小学生が放課後を安全で有意義に過ごせるための“条件”を考えた。(内田淑子)

 ◆車で送迎●6年生まで●夜10時まで
 東京都世田谷区の住宅街にあるビルを訪ねた。一室に夏休み中の子どもたちが通う「キッズベースキャンプ」がある。扉にはカギがかけられ、外からは呼び鈴を押して開けてもらう決まり。防犯対策の一つだ。室内はゲームに興じたり、オルガンを弾いたりする子どもでにぎわっていた。
 東京・港区の企業がこの夏始めた小学生対象の預かり事業だ。経済産業省の「サービス産業創出支援事業(育児支援関連)」に選定されている。担当スタッフの島根太郎さんは「保育園は遅くまで預かってもらえるところがあるが、現在は、小学生になると親が帰宅するまでの間を見守ってくれる制度が手薄。安全への不安も高まっている」と事業の狙いを語る。
 目玉の一つは送迎。近くの小学校まで車で迎えに行き、帰りも自宅まで送り届ける。希望者には夕食も提供する。正規職員は幼稚園教諭の有資格者など6人で、1日20人ほどを預かるという。
 費用は、1か月4万9800円(月曜〜土曜の放課後から午後7時まで)。朝8時半からの夏休み期間(8月)は7万9800円。急用などで1日だけ利用する場合は5000円。別料金を払えば、夜10時までの延長が可能だ。
 共働き家庭の子どもたちの多くは各地の「学童保育」で放課後を過ごしてきたが、大半が3年生までしか利用できない。このため、ここでは6年生まで預かることで利便性を打ち出している。ただ料金は、月額1万円程度の学童保育に比べ割高だ。
 東京都の会社員、笹木進さん(39)は、小学2年生の長男を9月から同キャンプに通わせる。「地元の学童保育はイモを洗うような混雑ぶり。出費はかさむが、静かに過ごせる環境やきめ細かい対応をしてもらえるところに預けたかった。礼儀なども教えてほしい」と話す。
 東京都内の学習塾も東京、神奈川を中心に「滞在型進学塾 エルフィーキッズ」と名付けた新事業を今年度始めた。勉強を教えるだけでなく、親が迎えにくるまで、おやつを食べさせたり、カルタなどのゲームをさせたりして過ごさせる。費用は週5日で月額5万400円(放課後3時〜午後7時のケース)。
 事業責任者の北野武良さんは「教室の最寄り駅まで担当スタッフが迎えに行ったり、教室に着いたことを保護者にメールで連絡したり、安全に配慮しています。また1人のスタッフが担当する子どもが多くならないように、6人までと決めています」。
 横浜市の自営業、日達貴代さん(37)は小学1年生の長女をこの塾に通わせている。「子どもは自宅から離れた私立小学校に通っています。迎えの時間に少し遅れても対応してもらえ、融通が利くので助かります」と話す。
 これまで学童保育には「学校の近くに施設がない」「多数の子どもで混雑し、ゆったり過ごせない」などの不満の声があった。奈良女子大助教授の中山徹さん(自治体政策学)は「公立小学校での全児童を対象とした新たな預かり事業では、預かり時間に柔軟に対応したり、指導員1人あたりの児童の定員を設けたり、質の面にも十分配慮してほしい」と要望している。
 全国学童保育連絡協議会(東京)事務局次長の真田祐(ゆたか)さんも「子どもたちが毎日『ただいま』と帰ってこられるよう、くつろげる雰囲気を大切にしてほしい」と話している。
(2006年8月30日 読売新聞)