求むマル暗記力?

時事通信出版局 内外教育研究会 編集部コラムより。おもしろい。
http://book.jiji.com/kyouin/column/index.html

この夏の教員試験を解いていて、「教えて考えさせる」と「教えて学ばせる」とは、いったいどこが違うのかと考え込んだ問題がある。「新しい時代の義務教育を創造する」(中教審答申/05年10月)からの出題で、単純な穴埋めだが、一方が正解でもう一方は×となる。答えに迷って時間をつぶしてしまった受験生は、かなり多かったと思う。
  出題の内容は下記の通りで、学習指導要領の見直しに関する基本的な考え方の部分で、(ア)〜(エ)にあてはまる語句の適切な組み合わせを①〜⑤から選ばせるというもの。
 
・「読み・書き・計算」などの基礎・基本を確実に定着させ、(ア)教育を基本として、自ら学び自ら考え行動する力を育成すること。
・将来の職業や生活への見通しを与えるなど、学ぶことや(イ)、生きることの尊さを実感させる教育を充実し、学ぶ意欲を高めること。
・(ウ)と連携し、基本的な生活習慣、学習習慣を確立すること。
・(エ)に生きる日本人としての自覚を育てること。
 
① (ア)教えて考えさせる (イ)協力すること (ウ)地域 (エ)21世紀
② (ア)教えて学ばせる  (イ)働くこと   (ウ)地域 (エ)21世紀
③ (ア)教えて考えさせる (イ)働くこと   (ウ)家庭 (エ)国際社会
④ (ア)教えて学ばせる  (イ)働くこと   (ウ)家庭 (エ)国際社会
⑤ (ア)教えて学ばせる  (イ)協力すること (ウ)家庭 (エ)国際社会
 
 (ア)にあてはまるのは「教えて考えさせる」のか、「教えて学ばせる」のどちらか。答申はA4判で50ページほどあるが、ほぼ全文を丸暗記していなければ、正解とされる「教えて考えさせる」は答えられそうにない。「教えて学ばせる」はなんとなくヘンだからという正解もあるだろうが、「教えて(自ら)学ばせる」と解釈する。こうなるとますます違いがわからない。(エ)の答えは「国際社会」で「21世紀」ではない。答申に「国際社会」と書いてあるからで、文脈からはほとんど同じ意味にとれる。
  この問題は、「暗記さえしていれば中身は問わない」というレベルで、いわゆる悪問だろう。「悪問」という言葉は、広辞苑に載っていないから、珍問といってもいい。一発勝負の筆記試験だから、実力がきちんと評価される問題を課して欲しいと思う。(浅)06年8月30日