メタフィクションものということで『恋に落ちたシェイクスピア』を見たが、脚本がトム・ストッパードだった。『ローゼンクランツ・・・』の。で、調べたら『ブラジル』もだった。なあんだ。あとソンタグ『反解釈』。

研究室で出している紀要でちょっとした特集で映画について書くみたいな企画をすることにして、で、言ってはみたものの、どうしようかと思っているところで、考えているうちに、メタフィクションってので書けないかなという気になりつつある。いまさらとか言わずにですね、学生さんたちに薦めるには、やはりそういう「仕掛け」がありありとわかるのがいいのでは、ということで。で、いくつかメタフィクション物を思い浮かべているのだけれど、ちょうど手元に録画したなり見ていなかった『恋に落ちたシェイクスピア』を見てみた。

これ、シェークスピアが恋に落ちましたみたいな話で、そのシェークスピアが書きつつある芝居が「ロミオとジュリエット」になり、現実とフィクションが交錯する、みたいな話。ちょっと面白いのは、映画の世界内では、シェークスピアの恋愛が現実、「ロミオとジュリエット」という芝居がフィクション、ということになっているのだけれど、映画を見ている私たちにとっては、現実に実在する「ロミオとジュリエット」という戯曲の、フィクショナルな裏話としてのフィクショナルなシェークスピアをみていることになるんである。なので、現実とフィクションが交錯するとか、あるいは現実がフィクションとしてあるいはフィクションが現実として成立するとか、そういうところがうまくねじれていておもしろい。クライマックスのところで、カメラの引きいっぱつで現実とフィクションをひっくりかえすところとか。
ところで、映画が終わってエンディングのクレディットをみていたら、脚本にトム・ストッパードと書いてあって、なあんだ、と思った。
映画を見始めたころにいろいろ教えてもらっていた同級生に教えてもらって見た『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』の人じゃん。あっちは「ハムレット」を裏側から見たメタフィクションで、こんどは「ロミオとジュリエット」だ、と。手馴れているわけだ。
と思ってさらに検索をかけたら『未来世紀ブラジル』もやってるんじゃん。あれもメタフィクショナルな仕掛けがあったような気がして、念頭にあった(けれどさすがに自分の世代のマストでも今の学生に薦めるのは気が引けると思っていた)一本である。こんなのばっかしやっとるのやな。
未来世紀ブラジル [DVD]

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ところで、メタフィクションもので最初に念頭にあったのは、某マキノの某作品なのだけれど、さいしょはそれを決定論/自由意志論の文脈で考えていて、うーむと言っていたのだけれど、メタフィクションっていう切り口を補助線で打ち出せば、類例の作品も出てくるし書きやすいかな、と思ったものだったのだ。
で、以前そういうやりとりを、自分のBBSでどこかの学生さんとやったことがあって、そのときに挙がった文献が、ソンタグ『反解釈』の中の「悲劇の死」という、短い書評(「メタシアター」って本の)である。
反解釈 (ちくま学芸文庫)

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そのとき買ってちょっと読んでた。読み直してみようかな。