朝日新聞の夕刊「棋士快声」欄が柳時熏「悲運の棋士、幸運への再出発」だと。やはりそう見るよなあ。

この人、若くて売出し中のときは、なんか強くて嫌味だなあとおもっていたのだけれど、ひところから、どうも気の毒な被害者キャラになっているんである。その辺で、柳くんがんばれ、という気持ちになっているのだけれど、そういうこちらの心の動きをそのまま記事にしているかんじ。やはりみんなそう見るのである。
新聞では名前は伏せてあるけれど、某悪い人であるところの某九段が酒席で柳君にいんねんをふっかけてグラスで柳君の顔を殴って怪我をさせたというのだから、100%ひどいはなしである。その因縁の内容は知らないけれど、想像すると、まぁ、嫌な想像はあれこれ出てきて、だから今は謹慎があけて平気な顔をしてテレビや棋戦に出ている某九段の悪印象はぬぐえないのだけれど、柳君はおまけにもうひとつひどいめにあっていて、
王立誠棋聖に挑戦した棋聖戦の七番勝負の第五局、ほぼ勝っていて、お互いに目で終局の合図をしてダメ詰め、という段取りのはずだったのだけれど、柳くんが終局のつもりでぱらぱらとダメを詰めていたら、自分の石のダメが詰まって当たりになっているのに気がつかなくて、立誠さんはそれを黙って取ってしまったんである。普通はやらないと思う。でも立誠さんは、まぁ、それをやる人だというのはわからんではない。立会人のコンピューター石田が入って協議の結果、「目で終局の合図」がお互いに確認できてなかった、なので終局にはなっていなかった、なので立誠さんのが正しい、と言わざるを得ない、ということになって、そのあとあらためてお互いに確認の上終局になったけれど、そりゃ6子も黙って取られてりゃ負けるわね(あ、それとも柳くんが即刻投了したのだっけか)。この対局、ちょうどBSでやってて、ちょうど深夜に見ていて、唖然とした覚えがある。
たぶんこの事件を受けてだと思うけれど、プロの対局では目で合図、というのがなくなって、最後のダメ詰めまできちんとやることになったんじゃないかと思う。その意味では、柳くんは囲碁界に影響を残したといえなくはないけれど。
ともあれ、気の毒な被害者キャラは脱してほしい。なんか、NHK杯の解説なんかでも、端正で明快なのだけれどちょっとニヒルで暗い感じがびみょうになくもない。ふつうに明るくしゃべっているのに影がある、みたいな。そのへんを、被害者キャラ方面にもっていくのではなくて、韓流スターのような方向性にもってってほしいものである。
「昨夏から幸運に転じたらしい。知人の紹介で出会った女性ピアニストと恋に落ちて2月末に挙式。新妻にローストビーフや子羊の香草焼きなど料理の腕を振るうそうである」だと。おめでとう柳くん。その調子だ。