労働科学研究所 教職員の健康やストレスについての調査結果を発表

1年前のニュースだけれど、みつけたので。
http://alertwire.jp/read.cgi?id=200611221922163

2006年11月22日掲載
日本教職員組合
教職員が元気に教育活動をするためには 労働科学研究所 教職員の健康やストレスについての調査結果を発表
 
近年、教職員の精神疾患による休職が増加しており、病気休職者の56%を占めるに至っています。子どもたちの教育に重要な役割を果たす教職員を元気にするためにはどうすればよいのかという観点から、教職員の心身状態、ストレスの背景となる教育現場をとりまく状況を明らかにするために調査がおこなわれました。

【調査機関】
財団法人 労働科学研究所川崎市) 教職員の健康調査委員会

【調査目的】
2004年度には教職員の病気休職者の56.4%が精神疾患による休職者で占めるまでになり、教職員のストレス、過労死が社会問題になっている。その背景として、学習指導要領の改正などの教育改革、教育現場のIT化、教職員の人事評価制度の導入、いじめ、不登校などの児童生徒の問題などのさまざ
まな要因が絡み合っているといわれている。
次世代を担う子どもたちの教育に、重要な役割を果たす教職員の健康状態を調査し、教職現場をとりまくさまざまな要因、教職という特殊性からくる背景から課題を明らかにすることを目的として調査をおこなった。

【調査方法】
2005年11月に、大阪府、神奈川県、岩手県大分県鳥取県の5府県6000名の教職員を対象とし、校種、年代に片寄りがないように配慮したアンケート調査を行い、有効回答数2485名を分析対象とした。

【調査項目】
・「職業性ストレス簡易調査票」と同一の調査項目でおこなった。(この調査票は、旧労働省「作業関連疾患の予防に関する研究班」―ストレス測定研究グループによって作成された。また、2002年から2004年の厚生労働科学研究費補助金労働安全衛生総合研究事業「職場環境等の改善等によるメンタルヘルス対策に関する研究」でストレスの現状把握のためのマニュアルを作成したものである。)
・結果を国内のさまざまな業種、職種、約25,000人から求めた標準値と比較した。
・また、ストレス反応だけでなく、ストレス要因についての調査もおこなった。

【調査結果の概要】
<ストレス要因>
ストレス要因に関する尺度は9種類で、それは、<(1)心理的な仕事の負担度(量)、(2)心理的な仕事の負担度(質)、(3)自覚的な身体的負担度、(4)職場の対人関係でのストレス、(5)職場環境によるストレス、(6)仕事のコントロール度、(7)技能の活用度、(8)仕事の適性度、(9)働きがい。>


今回の調査では、
(1)心理的な仕事の負担度で、負担が高い(多い)と感じている人は男性の場合、23.3%で標準値の2.2倍、女性は、32.8%で標準値の3.2倍であった。

(2)自覚的な身体的負担度は、男女とも標準値の4倍弱の高率であった。

<ストレス反応>
心理的ストレス反応としては、(1)活気、(2)イライラ感、(3)疲労感、(4)不安感、(5)抑うつ感。身体的ストレス反応としては(6)身体愁訴がある。

心理的ストレスの中でも、強いストレス反応は「抑うつ感」、次に「不安感」であるとされている。

調査結果では、「抑うつ感」は、女性は標準値と同程度であったが、男性は標準値の1.8倍、「不安感」は、男性は標準値の1.5倍、女性は1.3倍であった。

・身体的ストレスを示す「身体愁訴」は、女性はほぼ標準値と同レベルであったが、男性は標準値の1.6倍であった。

<教職員の仕事状況>
・超過勤務時間
教職員全体では37.2%、とりわけ中学校教員の50.7%が週10時間以上(月換算42.9時間)超過勤務をしている。

・持ち帰り仕事
教職員全体では、19.1%、小学校教員では22.6%が週10時間以上(月換算42.9時間)の持ち帰り仕事をしている。

・超過勤務と持ち帰り仕事の合算結果
教職員全体で、週12.4時間、月に換算すると約50時間となり、時間外労働の限度基準である45時間を超えている。中学校では、教職員の平均が週14時間(月換算60時間)であり、22.5%が週当たり20時間(月換算86時間<厚生労働省では、過労死基準を80時間としている>)以上、70.5%が10時間以上の超過勤務、持ち帰り仕事をおこなっている。

・休憩時間の取得状況
「いつも取れなかった」54.7%、「取れないことが多かった」31.9%で、合わせて86.6%。とりわけ小中学校においては90%以上であった。

<ストレス要因のストレス反応への影響と要因の相関関係>
今回の調査は、ストレス要因と、要因相互がどのような関係で影響を及ぼしているのかを、「構造方程式モデル」という最新の統計手法を用い、ストレス反応として最も注目すべき「抑うつ感」に影響を与える項目の抽出を段階を踏み繰り返し行うことで明らかにした。

・ストレスに影響する要因

(1)心理的な仕事の負担度(量)、心理的な仕事の負担度(質)

(2)教育活動をとりまく環境、学校運営と職務遂行の仕組み、仕事と生活への影響

(3)超過勤務、持ち帰り仕事

(4)学習外の指導、特別活動・その他、学校外での職務の遂行程度

・ストレス要因のストレス反応への影響とストレス要因の相関関係

(1)ストレス反応に最も大きな影響を与えるのは、「教育活動をとりまく環境」(「児童・生徒との関係の難しさ」「児童・生徒の授業態度の変容」「教育成果の見えにくさ」「保護者・地域との関係の複雑化」)の変化である。いずれの校種においても共通して大きなストレス要因となっている。

(2)「仕事と生活への影響」「心理的な仕事の負担度」「学習外の指導等職務の多さ」の諸要因がおきる背景には、「学校運営と職務遂行の仕組み」(「教職員の負担軽減措置の遅れ」「事務作業の増大」「管理主義的学校運営」「職務分担の偏り」)がある。

(3)「教育活動を取り巻く環境」と「学校運営と職務遂行の仕組み」は強い相関関係にある。

学校現場は、「教育活動をとりまく環境」の変化と複雑さ、そのことと「学校運営と職務遂行の仕組み」との相関関係に起因する問題が多くあるため、教職員に「超過勤務」「持ち帰り仕事」「学習外の指導等職務」を増大させている。

そのため、「教育のための研究・準備時間確保の困難化」「家庭・余暇生活時間の減少」「健康維持のための自己コントロールの困難化」「職場内コミュニケーションの余裕不足」)という「仕事と生活への影響」をもたらしており、それが、「超過勤務」の増加とともに、「心理的な仕事の負担度」を強くし、教職員にメンタルストレスを与えているという悪循環とも言える状況にある。


【教職員の健康を守るための提言】教職員が健康で教育活動にとりくむための7つの提言

労働基準法の規定どおりの勤務時間に。・教育本来のとりくみに集中できる体制に。・健康を害さないための予防対策を。・職場での安全衛生活動を実践しよう。・教職員の休憩・休息を確保しよう。・現場の意見を反映した教育政策を。・教育は社会全体で行うもの。

ん?
ニュースのリリース元が日教組だぞ?労働科学研究所の調査では?と思ったら、

http://www.rengo-news.co.jp/home/topics050723.htm
050721・教育基本法改悪反対で運動/日教組大会/義務教育費国庫負担堅持求める

 日教組は七月十八日から三日間、東京で定期大会を開き、教育基本法改悪反対や義務教育費国庫負担の堅持を柱とする〇五〜〇六年度運動方針を決めた。それぞれ重大局面に入った場合には「教育の危機宣言」を出し、全国的な運動を展開する考えだ。
 教育基本法に関しては中央教育審議会中教審)が既に「国を愛する心」の明記などを柱とする改正を答申しており、政府は法案の提出を準備している。中教審は義務教育費国庫負担の見直しについても十月に最終報告を行い、これを受けて政府与党が十一月にも最終決定する予定だ。
 これに対して日教組ではこれまで取り組んできた全国五万カ所教育対話集会や教育改革全国キャンペーンを実施し、教育基本法の理念を生かす社会的合意づくりをめざす。国会の衆参両院に「教育基本法調査会(仮称)」を設置することも求めた。憲法改悪反対の取り組みも強める。
 執行部は教育基本法改悪について全分会・組合員による統一行動を提起するが、ストは行わないとの考えを示した。
 国庫負担堅持に向けてはPTAや校長との共同署名、識者や文化人を交えたシンポジウム開催などを検討する。
 多忙化を背景に病気になる教職員が増えていることをふまえ、「教職員の健康調査委員会」の設置も決めた。外部の研究者などを交えて、大がかりな実態調査を行う予定だ。
 森越康雄委員長は憲法を「不磨の大典」とする立場ではないとしつつ、「『戦争のできる普通の国』や『権利ばかりで義務が足りない』とする立場からの改憲論には、真っ向から対決する」「日教組本部でも各単組でも憲法を変えようという意見はまったく聞こえてこない」と述べた。「『教育基本法改正』を主張する立場も(改憲を主張する立場も)うり二つで、教育を権力の支配下におくためのもの」と指摘した上で、日教組憲法について「立憲主義」の立場であることを強調した。
「連合通信・隔日版」

なるほど。「外部の研究者などを交えて大がかりな実態調査を行う予定だ」ってのがこれだったわけですね。