「幼稚園はタダ、私大生に30万円…バラマキ文科省案」

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20080529-OYT8T00491.htm

幼稚園はタダ、私大生に30万円…バラマキ文科省
教育予算 7兆円増額なら
 「幼稚園、保育所は無償」「私立大学生200万人に30万円支給」――。政府の「教育振興基本計画」で、教育投資の総額が対国内総生産(GDP)比で、現在の3・5%から5%になった場合、文部科学省が検討している増額分1・5%(約7兆円)の使途が29日、明らかになった。
 低所得者世帯の大学生の授業料免除や私立の高校・大学生などへの授業料減額などに約2・2兆円をつぎ込むなど大盤振る舞いが目立つ。財務省は反発を強めており、振興計画の閣議決定は6月中旬以降にずれ込みそうだ。
 「教育振興基本計画」は、今年度から5年間の教育政策の財政目標を定めるもの。4月の中央教育審議会の答申は、国の財政事情に配慮し、投資額の目標は示さなかった。だが、自民党文教族議員から「教育にかけるお金をきちんと書き込むべきだ」など“激励”の声があがり、文科省は計画原案で数値目標を織り込んだ。
 一方、財務省は「財源や使途が不明」と反発。このため、文科省は増額分約7兆円の使途を急きょまとめた。
 年収200万円未満の家庭の大学・短大生の授業料は免除、500万円未満は半額免除する。すべての学校施設の耐震化に約1兆円、3〜5歳児までの幼稚園と保育所の無償化費用として計約7700億円を盛り込んだ。また、文科省は同計画に教職員定数の2万5000人増員を盛り込んでおり、この人件費を1750億円と試算している。
(2008年5月29日 読売新聞)

http://mainichi.jp/life/edu/news/20080529ddm008010020000c.html

教育予算:「GDP5%」で攻防 文科省増額方針、財務省は反発
09年度予算編成をにらんだ財務省文部科学省の攻防が激化している。文科省自民党文教族は近く閣議決定する「教育振興基本計画」に国と地方の教育支出額を「国内総生産(GDP)比5%」まで引き上げる方針を盛り込み、予算の大幅増額に布石を打つ考え。これに対し、財務省は「増額を認められる財政状況ではない」と反発。予算増額を伴わない独自の教育充実策を提言するなど、対決姿勢を強めている。

 教育予算のGDP比は現在3・5%だが、文科省は同計画で「教育立国実現には欧米並み5・0%の水準が不可欠」と打ち出す方針。「ゆとり教育」の転換を名目に小中学校教職員定数を5年間で2万5000人増員することも計画する。

 しかし、国の教育支出を5%に上げるには7兆4000億円もの財源が必要だ。財務省は「消費税3%分もの予算を教育だけに充てることに、国民の理解が得られるとは思えない」と反発している。少子化が進む日本の教育予算は、児童・生徒1人当たりで見ると欧米先進国にそん色がない水準にあることをデータで提示。教職員増員計画に対しても、教師1人が受け持つ授業時間数が欧米に比べて短いことなどを示して、反対の論陣を張る。

 さらに、文科省が注力する国立大学の研究支援でも財務省独自の改革試案を公表した。

 国立大の学費を私大並みに引き上げるなど措置を講じれば、国が現在国立大に配分している運営費交付金(08年度予算で計1・2兆円)の中から最大5200億円の財源が工面でき、世界的な研究支援などに振り向けられるとするアイデアを打ち上げた。【清水憲司】

毎日新聞 2008年5月29日 東京朝刊


「教育予算やまぬ「文書合戦」…文科省財務省に再反論」
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20080520-OYT1T00225.htm?from=nwlb

教育予算やまぬ「文書合戦」…文科省財務省に再反論
 文部科学省は19日、財務省が12日に発表した、国の教育支出の大幅増額は必要ないとする「反論」に対する「再反論」の文書をまとめた。

 教育予算をめぐる財務、文科両省の対立は、「文書合戦」の様相を呈してきた。

 文科省は、今年度から5年間の教育政策の財政目標を定める「教育振興基本計画」をめぐり、教育投資の数値目標を対国内総生産(GDP)比で「5%」と明記するよう求めている。「再反論」では、現在のGDP比が、経済協力開発機構OECD)諸国の中で2番目に低いなどのデータを盛り込んでいる。

 財務省は12日、「生徒1人あたりなら、米英独仏の平均とほぼ同水準」とする反論文書を発表。数値目標の明記についても、「教育投資や教職員定数の『投入量』でなく、どのような子供に育って欲しいかという『成果』で設定すべきだ」と否定的な見解を示した。

 文科省はこれに対し、「成果の実現には一定の条件整備が必要で、そのための投入量目標も重要だ」と反論している。

(2008年5月20日09時08分 読売新聞)


http://mainichi.jp/life/edu/news/20080526ddm004100054000c.html

新教育の森:教育振興基本計画 予算増の数値目標、明記したい文科省
 ◇財務省は反論書出し対抗
 今後5〜10年の教育政策の方向性を示す政府の教育振興基本計画。教育投資などの数値目標が盛り込まれるかが焦点となっており、閣議決定を前に文部科学省財務省の攻防が激化している。【加藤隆寛】

 ◆GDP比低い日本

 「ずいぶん挑発的な副題じゃないか。我々の政策がウソに基づいているとでも言うのか」。文科省幹部が一通のリポートのページを繰りながら顔をしかめた。副題は「事実に基づいた教育政策のために」。財務省主計局が今月12日、「日本の教育予算は諸外国より劣る」と主張する文科省へ対抗するために公表した「反論書」だ。

 文科省は基本計画に「今後10年で、教育予算の対国内総生産(GDP)比を現在の3・5%から5・0%を上回る水準に引き上げる」「5年間で教職員定数を2万5000人増やす」と記載することを目指している。

 日本はGDP492兆円に対し、教育支出は17・2兆円(04年)で、GDP比3・5%。経済協力開発機構OECD)加盟国の平均は5%で遠く及ばない。渡海紀三朗文科相はGDP比の目標を掲げる理由について、「国力であるGDPを国家としてどんな政策選択に向けていくかを示す値だ」と説明する。

 ◆閣議決定で優遇期待

 この目標の実現には、約7兆4000億円の財源が必要になる。緊縮財政の下では、予算獲得は容易ではない。しかし、基本計画は閣議で決定される。閣議決定された数値目標には一定の重みがあり、財務省との予算折衝で文科省が優位に立つことが可能となるとの思いがある。

 例えば、06年3月に閣議決定された科学技術基本計画は研究開発投資目標を「5年間で25兆円」と明記した。文科省幹部は「閣議決定された基本計画があることで、科学技術関係の予算が一部優遇されているのは事実だ」と話す。

 ◆互いに主張譲らず

 文科省の思惑にくぎを刺すように、財務省の反論書は自作のデータを示し、「日本も他国並みに教育に金をかけている」「金をかければ教育が改善するわけではない。教育は質が重要だ」などと主張した。基本計画について「投資目標ではなく、学力水準や規範意識をどの程度向上させるのかなどの『成果指標』を掲げるべきだ」と突き放した。

 日本で国と地方が支出する予算の合計はGDP比37・2%で、OECD平均の42・1%に比べて少ない。少子化も進んでいる。反論書はこうした条件の違いを示した上で、「生徒1人当たりの教育支出を国民1人当たりのGDPで割ると、日本は20・9%で、主要先進国(21・4%)とそん色ない」と主張する。

 ただ、この指摘には、からくりもありそうだ。「主要先進国」とは米国、イギリス、ドイツ、フランスに日本を加えた5カ国を指す。このうち、GDP比でみた全教育支出がOECD平均を上回るのは米仏だけ。アイスランドデンマークスウェーデンなど、GDP比でみた支出が上位の国は除かれている。データ不足の4カ国を除く26カ国のOECD平均値は22・1%だ。

 生徒1人当たりの教育支出を国民1人当たりのGDPで割るという計算法について、財務省は「為替レートの影響を排除するためだ。単純に全教育支出を生徒数で割った1人当たりの額で比較しても、為替レートの影響を排除できず、正確に比較できない」と説明する。これに対し、文科省の担当者は「あまり意味のある数値と思えない」と疑問を示す。

 両省の議論について、渡海文科相は20日の会見で「お互いが自分の主張をしているだけで、まともにぶつかってないんじゃないかという気がする」と話した。

 福田康夫首相は4月30日の会見で、道路特定財源一般財源化後の使途の一つに「高等教育の充実」を挙げた。新たな財源の獲得を巡る各省や族議員の思惑も交錯する。今後は文科省の原案をたたき台に、財務省総務省との折衝が本格化する。基本計画は本来なら昨年度中に閣議決定される予定だったが、決定まではまだ時間がかかりそうだ。

 ◇中教審答申には記載なく 新指導要領実施迫り、焦りも
 今月15日の自民党文教制度調査会合同会議。12日に財務省が公表した反論書に明確に反論できなかった文科省幹部に、議員から怒声が飛んだ。「学力だって体力だって現に落ちているじゃないか。『これだけ上げます。そのために予算が必要です』となぜ書けない」

 基本計画はそもそも、中央教育審議会で1年2カ月にわたって審議された。委員からも具体的な数値目標を盛り込むことを求める意見が出されたが、答申前の折衝で、「(予算増は)行革推進法などとの整合性が取れない」とする財務省側に文科省側が押し切られ、数値目標明記を断念した。その後、文教族議員らが数値目標のない答申を批判して官邸などに要請行動。渡海文科相が文相・文科相OBとの会合で、数値目標を入れた省としての原案を作る方針を示したという経緯がある。

 文科省はなぜ、「現状で不足している予算を検証・積算し、必要な金額を導く」という手法を取らなかったのか。ある文科省幹部は「例えば、『どれだけ定数を増やせば、どれだけ教師の手が空くか』などの効果を定量的に示したデータはない。中教審でも十分な議論がなされていないことを文科省として書き込むのは難しい」と事情を打ち明ける。少人数教育と学力向上の関係もきちんと実証されておらず、「投資の効果は投資してみなければ分からない」という現状から抜け出せずにいるという。

 しかし、教育現場からは、「人と金」の不足に苦しむ悲鳴が上がっている。学習内容を増やす新学習指導要領の完全実施は小学校が11年度、中学校が12年度に迫った。来年度からは理数科目を中心に前倒し実施も始まる。別の文科省幹部は「指導要領をこれだけ変えておいて『定数は増やせません』なんて通らない。それでは現場は怒る」と顔に焦りの色を浮かべる。こうした危機感から、文科省原案に教職員定数の目標値も書き込んだ。

 ◇財政縮減が響き、政府方針も後退
 文科省が基本計画で数値目標を掲げるようになった原点は、政府の教育改革国民会議による「17の提案」(00年12月)だった。基本計画の必要性を訴え、「投資を惜しんで教育改革は実行できない。財政支出の指標の設定も考えるべきだ」と提言した。

 教育基本法改正(06年12月)を巡る議論では、「改正法で基本計画策定を義務づけ数値目標を掲げる」とされた。文科省には、改正議論で注目された愛国心など保守色の上乗せだけでなく、予算面での実効性が見込める法改正との印象が強まった。

 だが、財政縮減の流れで、「教育も聖域ではない」との考え方が一般化する。皮肉なことに、改正教育基本法が成立した06年、風向きが完全に変わった。骨太の方針06や行政改革推進法で文教予算の削減方針が打ち出され、教職員定数は「07年度から5年間で1万人純減させる」などと定められた。

 政府の教育再生会議の報告(07年6月)では、「(予算に)メリハリをつける」「内容の充実を」などと記述が後退。文科省幹部は「『ハシゴを外された』と思った」と振り返る。

毎日新聞 2008年5月26日 東京朝刊

文科省財務省が教育支出で衝突
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20080501-OYT8T00424.htm

文科省財務省が教育支出で衝突
教育支出に数値目標GDP5%
「先進国並みに」「方法は他にも」
 文部科学省は、教育支出額を今後10年間で国内総生産(GDP)の5・0%まで引き上げるという数値目標を、戦後初めて国が策定する「教育振興基本計画」に盛り込む方針を決めた。

 これまで国の財政事情に配慮し、数値目標には消極的だったが、先進各国に水をあけられていることへの危機感から方針転換した。しかし、財務省は支出拡大には慎重姿勢のまま。6月にまとまる「経済財政改革の基本方針」(骨太の方針)も見据え、文科省を後押ししようと、河村建夫文科相自民党文教族議員が1日午前、首相官邸を訪れ、数値目標を入れるよう要請するなど政治闘争の様相も帯びている。

 文科相の諮問機関「中央教育審議会」が4月18日にまとめた教育振興基本計画の答申では、「欧米主要国と比べて遜色(そんしょく)ない教育水準を確保すべく、教育投資の充実を図ることが必要」という文言を入れただけだった。

 一転して、文科省が打ち出したGDP比5・0%という数値は、経済協力開発機構OECD)諸国が教育支出にかけている公的資金の平均値。日本は現在3・5%で、日米の大学生を比較した場合、一人あたりの公財政支出(年間)は、日本の67万円に対し、アメリカは106万円と39万円の開きがある。

 中教審の審議では「教育投資の充実は国力の維持・向上に最低限必要」(安西祐一郎慶応義塾長)といった意見が相次いだが、財務省との事前折衝で数値を入れることを拒まれて断念。自民党文教族からは「この答申では教育水準は上がらない」などと強い不満があがっていた。

 文科省は財源として道路特定財源一般財源化や税制改革に期待しており、実現すれば全国の教員も5年で2万1000人増やすことが可能になる。

 しかし、4月30日に自民党議員約20人と面会した額賀財務相は「教育への投資も重要だが、投資より効果が上がる方法もあるのではないか」と慎重で、先行きは不透明だ。

(2008年5月1日 読売新聞)