臨床心理士:初の労組結成 専門性高いのに月収13万円

http://mainichi.jp/life/health/news/20090407k0000m040040000c.html

東京都が設置する児童養護施設でカウンセラーとして働く臨床心理士らが6日、労働組合を結成した。児童虐待などが増えて子供の心への支援の必要性が言われる中、多くの臨床心理士が非常勤など低収入で不安定な状態に置かれているため。臨床心理士の労組結成は初めて。

 結成したのは、全国一般東京東部労組・臨床心理士ユニオン支部(木村秀委員長、8人)。木村委員長によると、組合員たちは月16日勤務の1年契約などの形で働く。臨床心理士の学会資格を得るには、大学院修了など高度な専門性が求められるが、月収は13万円弱。勤務を続けても賃金は上がらない。他の仕事と掛け持ちしなければ生活できず、辞める人も多い。都の施設では10年間で15人が辞めたという。

 木村委員長は「安心して働けない。子供たちの安定のためにも、私たちが仕事を辞めずに済む環境が必要だ」と話す。今後、約2万人の臨床心理士に労組加盟を呼びかけ、処遇改善などに取り組むという。問い合わせは同労組(03・3604・5983)。【東海林智】

まえも書いたか知らんが、いまの日本では(という言い方もようわからんけれど)、大学で専門的知識を身に付けて資格をとって専門職に就くと雇用が不安定になる、というはなしがあって、石原都知事のように勉強は適当にやっておいて専門性をそだてないで企業に入ると、それでもそれでも「ひとなみ」の雇用を守ろうと社会的セーフティネットの範囲内に入れてもらえるけれど、福祉でも心理でも司書でも学芸員でもそうだが、実は博士号ってのもそうだが、専門を生かして食っていこうと思うと、非常勤とか契約とかってことになりやすい。専門家は、専門バカっていうか、それしかできない道具みたいな扱いになって、組織の外部と見なされて、外注ってことで契約、ということになるってのがあるし、また、図書館や博物館がそうであるように、公的セクターでやってきたところが民営化されたり指定管理になったり、大学だって法人化されたりして、もともとが大もうけできる業界じゃないから公的セクターでやっていたってのに採算性を厳しく要求されたりして業界まるごと不安定化させられている、ってのもある。学校教員が教員免許更新制で不安定化するってのもある。お医者さんや学校の先生がそうであるように、専門家だということを逆手に取られて、なにかトラブルが起こったときにクライアントからちょっと理不尽めな責任追及が行われて(いわゆるモンスターなんとか、みたいな風に言うと通じやすいですが)、業界として疲弊してしまう、ということもあるかもしれない。
こんなことでは、大学でまともに勉強しようとかさせようとか思うようにはならないし、たしかに石原都知事のように、勉強など放棄しろということになる。それで石原都知事は学生時代に情念をそだてろ的なことを言うわけだし、たしかに情念ばかりに突き動かされて知性のない都民が増えれば石原都知事はうれしいだろうが、そういう世の中がいいかというのはよくわからん。知識社会ってのと逆方向に行くのがいいのかどうかは、むつかしいところだ。
もちろんひとつには、大学ってところがある種の領域については供給過剰である、ということもあって、臨床心理とか、じつは大学院博士課程も、供給過剰じゃないかと見えるふしもある。なので、淘汰されてちょうどだ、という意見もなくはないかもしれん。
でもまぁ、一般論で言うと、社会全体がもっと専門性を評価するようにならんといかん気はする。特定の領域にばかり人気が高くなって供給過剰が起こるってのも、専門家というもの全体としての評価の低さの裏返しかもしれない(イメージ的によさそうな臨床心理カウンセラー資格なんかが急にバブル的に憧れの的になる、とかね)。専門性全体の社会的評価が底上げされたら、志望者ももっと各領域にばらけて、おちつくかもしれない。
とか思います。
ついでにいうと、そうするとそのための戦略として労組ってのがどの程度有効でどの程度は他のやり方が必要なのか、というのは、これまた考えどころかも。