『三里塚 辺田部落』。村のほうに目を向けている。

三里塚シリーズ DVD BOX

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小川紳介見るシリーズ。前作の冒頭あたりで、(少なくとも映画上は)正面衝突的な闘争はあらかた大勢が決してしまったかのようで、本作ではもっぱら村のほうに目を向けている。若者たちは大量に逮捕されて投獄され、あるいはリーダー的な一人は悲痛な遺書を残して自死を選び、共同墓地まで接収されてしまい村人はやむなく墓を掘り返して移す。村の家にいきなり機動隊がわらわらとやってきてガサ入れしたり、また若者を逮捕していったり、ま、やりたいほうだいである。で、村では寄合をやってあれこれ話し合いをするシーンが延々続いたりして(例によってなまっているからさっぱりわからない)、あるいはおばさんたちが野良の一休みのときにお茶を飲みながら噂話をしたりしているのをみると、なんか、鬼に若者を連れ去られる民話の村のおはなしに見えてくる。もうさっぱり空港とかかんけいないような、古老の昔話だとか、おばさんたちがやる子孫繁栄の祭りだとか、そっちのほうに目が向いているわけで、まぁそれはそれで、卑劣で非人間的な国家権力に対する生き生きとした村の農民たち、みたいなことかもしれないんだけれど、まぁ、見てると、しみじみと負けたんだよなあと思うよねえ。ところで、逮捕される青年のひとりの名前が、字幕で、瓜生なんとか君、というふうに出てきて、あれ?と思って調べたら、やはりそうだったわけで(どこかで読んだことあったんだろう)、その瓜生なんとか君の弟?が、小川プロ撮影班となかよくなってうろちょろしているうちに小川プロに入ってしまい、そしてキャメラを持つようになって、そして黒沢清神田川淫乱戦争』『ドレミファ娘の血は騒ぐ』で商業映画デビューする瓜生敏彦という人なのであった。