『男のチャーハン道』読んだ。

『男のパスタ道』(http://d.hatena.ne.jp/k-i-t/20150406#p1)『男のハンバーグ道』(http://d.hatena.ne.jp/k-i-t/20150626#p1)につづく第三弾はチャーハン。チャーハンと来たか、しかしチャーハンというのは、薀蓄がやたらいろいろ出尽くしているような領域で、そこでこの著者の人が『パスタ道』のときのような驚天動地の新知見を提起できるのだろうか、と懸念がよぎらなくもない。そしてたしかに著者の人がプロローグでことわっているように、チャーハンというのは難敵なのだった。パスタであれば湯を沸騰させれば湯のどの部分でも100度、塩を何グラム入れると湯のどの部分でも塩分濃度何パーセント、というふうに、実験的に探究することができたのだけれど、チャーハンを炒めるというのは、同じ中華鍋でも火の当たる場所の具合によって温度も違うし、しかもその中でご飯をはげしく混ぜたり煽ったりするということになると、実験的な条件を整えることが困難である、と。そういわれればそうだな、と思ういっぽう、プロローグでそれだけ予防線を張っているところを見ると、この本大丈夫かなと心配になる。それでまぁしかし、いつものように、鍋をどうするか(そもそもふつうの家の台所の家庭用コンロで作る、という段階で、圧倒的にハンディなのではないか、それを鍋選びによってどこまでカバーできるのか)、「ご飯を卵でコーティングする」効果の是非(ちなみにわたくしは「最初にご飯と卵を混ぜてから炒める」家庭向け無難レシピを採用している)、油の種類と量はどうするか、混ぜ方や煽りはどうするか、具材の扱い方(この本ではネギと卵だけのチャーハンとする、チャーシューを考察し始めると別の一冊『男のチャーシュー道』が必要になってくる、うんぬん、ともあれ、ネギはどのように切ってどのタイミングで投入するか、等々)、とかなんとか、実験したり歴史をひもといたり先行する料理研究科や料理人やYouTube上の本場のレシピを参照したり、まぁそのあたりはけっこうがんばっているのだが − じつは本書は最後のところで、「えー?」というような展開があり、まぁしかしともあれ、ひとつの説得力あるレシピを提示して結論とすることになる。
それでまぁ、やはりチャーハン作ってみようかなという気にはさせるし、これからの自分のチャーハンの作り方とか考え方に影響を及ぼすだろうなとは思うけれど、それはそれとしてやはり「えー?」という感想はのこるだろうな。