『文学の淵を渡る』読んだ。大江健三郎と古井由吉の対談を集めたもの。

文学の淵を渡る (新潮文庫)

文学の淵を渡る (新潮文庫)

先日、出先の会議が終わって立ち寄った書店で買った数冊の文庫の一冊を、通勤電車で読んで残りをうちで読んだ。大江×古井の対談が、1993年、1996年、2010年、2014年、2015年に行われていて、それを収めたもの(5つの対談を収めた単行本が今年に文庫化されて、文庫版には単行本におさめられなかった2015年に二度目に行われた対談も収録されてる)。自分は、大江という人の小説も古井という人の小説も、昔に何冊か読んだていどで、たぶん大学院生の頃か何かに同じ時期に古本で買って読んでたんだと記憶する。古井由吉『杳子』は単行本で読んだ記憶があって、たしか修士論文を書いてた頃だったと思う。大江の何冊かはいずれも初期?のもので文庫本だったと思う。どっちかというと古井のほうに感じるところがあったような記憶がある。でもまぁいずれも、追いかけて次々と読んだかというとたぶんそこまではしなかったなり現在に至る(ふと思い出して検索してみたら古井を一冊読んでたようだ http://d.hatena.ne.jp/k-i-t/20121220#p1)。
で、この本、自分的にはそういうかんじの二人の小説家の対談で、当然両人が互いの作品を読んでそのわだいをふくめ、ふたりとも確信を持ったような言葉遣いで語り合い、しかも話がかみあっているのだけれど、まぁこちらは両小説家の熱心な読者ではないのでよくわからないところはある(それは先日読んだ大江×井上×筒井の鼎談本についても同様)。なのだけれど、1996年に『新潮』の特集、日本文学の100年、みたいな、『新潮』創刊以来100年間のあいだに掲載された森鴎外から中上健次までの短篇小説セレクション35作を、一作一作取り上げて二人で語り合う、という対談はおもしろかったっていうか勉強になるっぽかったし、なんかよく知らない私小説を、今は青空文庫とかで読めるわけなので、ちょっと読んでみようかしらという気にはさせた。またおなじく、文庫版の最後に収められた対談が「漱石100年」というテーマで、漱石について語り合っていて、これもへぇ、と思いながら読めた。