いまさら読んだ『ねじまき鳥クロニクル』。

ねじまき鳥クロニクル〈第1部〉泥棒かささぎ編 (新潮文庫)

ねじまき鳥クロニクル〈第1部〉泥棒かささぎ編 (新潮文庫)

この小説が出たときには、あれやこれやで読まず、そうしているうちになんだか「著者の転換点となる問題作」みたいなことに世間的になってきて、そうなるとなんとなく「読まないぞ」という気になってそれからずっと読んでいなかったし、そうするとその後の村上春樹の長編も読まないで(エッセイや短編集はけっこう読んでるんだけど)きたのだけれど、また長編も出たことだしということで今年になって学校帰りの古本屋でふと3冊まとめて買い、それからもしばらく放っておいたのだけれど、このところふとぽっかり時間的気分的なぐあいで「読もうか」という気が向いて、だらだら3日ぐらい?かけて読んだ。
で、あれやこれやの風のうわさからなんとなく想像していたかんじとちがって、主人公がほとんど動かないであれこれ喋っているか電話してるか手紙を読んでいるか夢を見ているかしてるうちに都合よく進んでいくという不精ったらしい話で、いつもながら嫁が謎の失踪をするし、いつもながら老若男女おなじ村上春樹文体で喋ったり書いたりしてるし、「ちょっと気の利いた言い回し」みたいなのが頁の中にいやというほど乱発されてるし、なんかやっぱり村上春樹だなあ、まんぞくまんぞくと思いながら読了。
まぁしかし、世代的なもので、やはり村上春樹というのは出れば読むもんなんだろうなあという気がして、そういう側面からいえば自分の時間はこの十数年のあいだ止まっていたのだ、とか、空虚な抜け殻としてただ生きてきたのだとか、言えなくもないだろうけれど別に村上春樹読書的側面などまぁどうだっていいことで、さしあたりようやくいくつかの長編を読んで追いつくことができるなと思う。