『新版 よくわかる! 短期療法ガイドブック』読んだ。トリッキーな心理療法へのわかりやすい入門書なかんじ。

若島短期療法本を読むシリーズ(https://k-i-t.hatenablog.com/entry/2020/12/08/132330 https://k-i-t.hatenablog.com/entry/2020/12/25/234124)。この著者の人のセッションが、「なにか深みとはかんけいないところでメキシコのプロレスのようなトリッキーなかんじ」だなあと思って興味をひかれたわけである。で、これは入門書。ブリーフセラピーの登場した背景、理論から具体的な手法まで、じっさいのケースのセッション事例をたくさん例にとりながら紹介してる。わかりやすい。で、なにがメキシコのプロレスかというと、いわゆる深層心理学とか精神力動とかそういう次元のクライアント理解によらずに(?)、クライアントが症状や問題を維持している仕組みに、コミュニケーションのレベルでトリッキーなやり方で介入して、変化を起こしてしまおう、というところ。いやまぁ、たぶんクライアントの精神力動みたいなものに対する見立てができない人がこれをやってもきっとうまくいかないんだろうけれど、すくなくとも技法としては、空中殺法のプロレスに終始する。それで、前に読んだ本とかセッション動画とかで、トリッキーで変な感じだなあ、あてずっぽうの思い付きみたいだなあ、というふうに感じられたことが、技法として説明されてておもしろい。
あと、
以前、オザケンの母親の人が書いた新書本、小沢牧子『「心の専門家」はいらない』を読んだときに、「心の専門家」がいかにくだらないことをやっているか、ばかばかしい手法の例として非難の材料にされてたのがあったけれど、なんか、症状に名前を付けるというのが、「外在化」の技法として紹介されてる(たとえばパニック発作に「タイガー」と名前を付けて、「タイガーが襲ってきたらどう対処しましょうか?」みたいに進めたり、「美女とタイガー」というお話を作ってくる宿題を提案したり)。えーとつまり、まごうかたなくばかばかしい手法ではあるのだけれど、ばかばかしいからといって批判してもしょうもないわけである。かんじんなのは、そういうばかばかしい手法を適切に用いてクライアントの問題を解消してしまう療法というのがげんにあるということで、不安障害に悩むアラサー女子が、そういうばかばかしいトリッキーなやりかたで、自分のパニックを外在化・客観化して自分から切り離すきっかけを得て、バカっぽいと思いつつ気持ちが明るくなって治っていくわけである。いうまでもなく、そういう心理療法をやっていくにはちゃんとしたやりかたが必要なわけで、たんにバカっぽいだけの人にはできないし、バカっぽい手法だから非難しているだけの人にも、できないわけである。