『薬の現象学』。薬剤師の人が書いた哲学エッセイというかんじで、現象学というわけでもなかった。

薬の現象学、というタイトルにひかれて読んでみたが、哲学が好きな薬剤師の人が書いた、哲学エッセイ、というかんじ。薬が効くとか医療的介入が功を奏するというのは、まぁ、確率的な現象で、しかもたとえばワクチンの効果が統計的な有意性をもって確認されたとしても、たとえばもともと10万人に何人、みたいな確率でしか罹患しない病気であれば、わずかの人数が救われるためにたくさんの人が注射を打つことになるよみたいな見かけにもなる。そういう確率的な現象を、主観的な目線の側から見て、薬の効果とは何なのか、薬の効果は実在するのか、みたいに問うてみるとちょっとパラドックスっぽく哲学っぽくなるとか、でもべつにトンデモ医療を正当化するつもりはない、ただ正統医療とトンデモ医療の線引きはこれまた実在するのであろうか、どうのこうの、みたいなことが、まぁたぶん「現象学」といいたかったゆえんなのだと推測する。
本の後半のほうの、具体的な薬とか医療とかのはなしに重心がかかってきたところのほうがおもしろい。